医学部医学科の中川准教授が日本遺伝学会奨励賞を受賞しました

医学部医学科基礎医学系分子生命科学領域の中川草准教授(総合医学研究所/マイクロ・ナノ研究開発センター)がこのほど、「大規模遺伝情報を用いたウイルス関連ゲノムの進化遺伝学的研究」で日本遺伝学会奨励賞を受賞。熊本県で開催された同学会「第95回大会」開催期間中の9月8日に授賞式が行われ、岩崎博史会長から賞状が授与されました。

この賞は、遺伝学の特定の分野で優れた研究を活発に行い、将来の成果が期待される会員に贈られています。ゲノム科学が専門の中川准教授は、さまざまな生物に由来するDNAの塩基配列を活用した比較ゲノム解析の研究に取り組んでおり、今回は、生物のゲノムに内在化したウイルス由来の遺伝子の機能と進化に関する研究や、新型コロナウイルスをはじめとするRNAウイルスのゲノム解析の研究などが高く評価されました。

中川准教授は、RNA配列からタンパク質が合成される「翻訳」というプロセスにおける開始機構が多様化していることや、生物の発生に重要な役割を担う転写機能をもつ遺伝子の起源とその多様な進化について明らかにする研究に従事した後、2013年4月に本学科に着任。16年にはエボラウイルスに生じた感染効率を向上させる変異を同定するなど多くの研究成果を発表してきました。新型コロナウイルスが流行してからは国内外の研究者と連携し、デルタ株の強い病毒性の原因や、ラムダ株、ミュー株、イプシロン、そしてオミクロン株の性状を変化させる変異を解析し、その成果は、『Nature』をはじめ多くの国際科学誌に掲載されました。さらに、世界における新型コロナウイルスの変異株の発生・拡大をリアルタイムに追跡できる高精細なCGアニメーション「8Kデータビジュアライゼーション[新型コロナウイルスの進化地図]」の制作にも協力。この動画はNHKの報道や科学番組などで用いられ、22年のグッドデザイン賞も受賞しました。

中川准教授は、「学生時代から在籍している学会から評価していただき大変うれしく思います。受賞はこれまでの研究生活を振り返る機会にもなり、今まで研究の対象は変わっても、常にベースにあるのは遺伝情報の解析だったとあらためて気づきました。これまでの研究を通して、ヒトの健康を考える際には、動物の健康や環境の保全までを含んだ『ワンヘルス』の視点が重要だと強く感じてきました。今後は、遺伝学的な情報解析から『ワンヘルス』の実現に向けてアプローチしていきたい」と話しています。