教育研究上の目的・人材像

情報科学科では工学的情報処理技術のみならず情報を科学的観点からも教育し研究を進める。まず、基本的なリテラシー教育として、コンピュータの構造を理解し、高度なソフトウェアを構築してデータを意のままに処理できる技術を教育する。また通信・ネットワークの仕組みを理解し、世界のネットワーク上に分散する情報を制御・活用する技術を教育する。しかし現在の情報処理技術に到達するまでには、高度な数学や理論、および電気・電子・物性・デバイス技術・高度な物理現象の研究と解明、さらにその応用開発が先行していることを忘れてはならない。またネットワーク上の情報処理機能に関する多数の高度で巧妙な着想が今日の技術革新をもたらしたわけである。すなわち今後の技術革新のためには深く広い科学的基礎研究と深い思索による飛躍的着想が求められる。したがって情報科学科の使命は次世代の情報処理技術の種となる基礎研究を進めることであろう。またその教育は社会の技術部門で即戦力として活躍できる能力を涵養すると共に、将来の新技術への対応能力、さらに次世代情報技術の着想と開発に貢献できる人材を育成することとなろう。

情報科学科が育成しようとする人材

情報科学科は “情報”と“人間”をキーワードとし専門領域における教育を重視する。その教育目標は次の通りである。

  1. 1.情報・人間の理論を理解し、技術を駆使できる(自ら考える力、挑み力)
  2. 2.情報・人間の理論と技術を支える倫理・科学思想を理解する(自ら考える力、挑み力)
  3. 3.情報・人間の理論と技術を支える基礎知識を理解する(自ら考える力、挑み力)
  4. 4.知識、思想、体躯を涵養し、国際社会で活躍する大いなる希望を涵養する(自ら考える力、集い力、挑み力、成し遂げ力)

上述の教育目標にむけ基礎知識・基礎技術を身に付け、今日のグローバル化した高度情報化社会において国際的に活躍できる人材を育成する。研究者・技術者として数理情報、人間・脳情報、画像情報処理に関する理論と応用技術を駆使できる人材を育成する。

各セメスターへの履修科目の配置に関する基本的な考え方

情報の科学とはなにか。近年の情報科学は、旧来の情報工学から様変わりし、人間・脳科学まで多様な学問体系を包含した総合科学に変貌している。情報科学科では大まかに3つの研究領域において情報科学の研究・教育を進める。これらは互いに相補的に関係し次世代情報技術の基礎研究分野と位置付けられるものである。

  1. 1.数理情報分野

    情報処理アルゴリズムを研究するためにはそれを支配する数学原理を理解してあたらなければならない。種々の符号化やデータ圧縮の技術はみな高度な理論に裏打ちされている。ネットワークの技術についても同様である。確率現象の理解も重要である。またソフトウェアについては言語の研究はもちろんシステムに関する理論が基礎となるだろう。高度なソフトウェアあるいはデータベースを効率よく構築するにはいかなる着想と理論が必要だろうか。次世代の情報検索はいかなる形態だろうか。普及したモバイル端末を活用する新しいサービス着想のための基礎研究はなんだろうか。高度な物理現象を情報処理に活用する革新技術へのアプローチは何だろう。情報科学科では数理情報分野の研究・教育を推進する。

  2. 2.人間・脳情報分野

    そもそもコンピュータに期待した機能は人間の情報処理機能であった。計算機能は十分実現されたが、視聴覚機能をはじめとしていわゆる人間的な情報処理機能の研究開発は不十分である。人間・脳の情報処理機能が十分理解・解明されていないからである。情報科学科では神経科学、脳科学、心理学、認知科学等人間の情報処理に関わる基礎知識を十分に研究・教育する。神経科学では情報処理の単位となる神経細胞の生理学的情報処理を学ぶ。脳科学では脳の構造と共にその機能を学ぶ。心理学はヒトの刺激と反応に関する科学的分析研究である。認知科学はヒトの知性に関する学問である。特に人間にとって重要な視覚機能については専門的な教育を目指す。身体筋肉の運動制御も重要な研究である。現在のロボットは生物に遠くおよばない。一方fMRI(機能的磁気共鳴画像)に代表される高度な医療技術は人類の福祉に計り知れない恩恵をもたらした。最近は医工学と呼ばれるように医療技術に情報処理技術は欠かせない。次世代の医療技術を革新する情報処理を研究する。また脳とコンピュータを直接接続する技術が現実味を帯びてきた。脳の研究は総合的な情報科学の研究となる。

  3. 3.画像情報分野

    情報は何らかのインターフェイスを経て人間に伝わらなければならない。画像はもっとも効率的な形態と考えられる。画像といっても人間の特性に適合した画像でなければならない。当然のことながら日常生活において通常観察する画像情報は人間にとって理解しやすい。抽象的な情報をいかに画像化すれば効率よく人間に伝えることができるだろうか。人間にとって検索しやすい画像形態は何だろう。現在のパソコンのデスクトップ画面は効率的だろうか。逆に人間の画像認識・処理の能力をコンピュータで実現する研究はコンピュータの実現当初からの技術者の夢である。旧来より人工知能とよばれる研究の重要なテーマであった。しかし計算機は進歩したが画像認識の研究成果は十分とは言いがたい。また人間を離れても画像の研究は重要である。画像を情報として扱う効率的な手段を研究する必要がある。画像の圧縮、符合化、通信、画像データベース検索など重要な課題がある。またリモートセンシングや監視カメラ画像の情報処理も重要な課題である。

情報科学科における履修科目は基礎科目から専門科目まで体系的に学習できるように各セメスターへ配置されている。その特徴は次のとおりである。

  1. 1.現代文明論をはじめとする現代教養科目、外国語科目は第4セメスターまでに修得する。
  2. 2.情報科学基幹科目を全セメスターに配置する。本基幹科目は情報科学科の人材育成の中核となる科目群である。 初年次は「情報科学入門ゼミナール1,2」を少人数ゼミナール形式で履修し、学生としての基本的心構え、学生生活の構築と自己管理能力を修得する。社会人としての基本的能力も身につける。第3セメスターでは「情報科学通論」を学ぶ。情報科学科教員の研究にふれ、将来の研究分野について基本的知識を涵養する。第4セメスターでは「情報技術論」において、技術者として基本的常識となる知識を広く学ぶ。バランスのとれた技術者を目指す科目である。第5、6セメスターでは「情報科学実験1,2」を履修し、研究の基礎となる実験に関する実力を涵養する。実験技術の修得と共にテーマについて、研究目的、手法、実験結果、考察、結論をまとめた報告書の作成を通じ将来の論文執筆の基礎を学ぶ。第6セメスターでは「情報科学ゼミナール」を履修する。卒業研究への継続を前提とした指導教員への配属を実施し、少人数ゼミナール形式で各教員による個別指導を実施する。文献研究、技術討論、プレゼンテーションなど研究の基礎となる実力を実践的に涵養する。第7、8セメスターでは「卒業研究1、2」に取り組む。大学教育の最後のもっとも重要な科目と位置づけて、単位の配分においても重視している。教員の指導に従い高度な研究を進め、卒業前に卒業研究発表会において成果を発表し評価を受ける。学会発表もめざすとよい。第7、8セメスターでは卒業研究と並行して「情報科学応用ゼミナール1,2」を履修する。本科目では学術・技術教育のみならず社会人教育をめざす。自立する社会人としての基本的心構え、自己管理能力を修得する。さらに会社・企業を研究し、技術史観また経営・経済観などを涵養し、今日のグローバル化した高度情報化社会において国際的に活躍できる実力を涵養する。
  3. 3.理工系基礎科目群は第4セメスターまでに履修する。基礎数学や物理、化学、電磁気など技術者として必要な基礎科目が網羅されている。
  4. 4.情報リテラシー科目群が第1セメスターから第5セメスターに配置されている。「コンピュータリテラシー」「コンピュータシステム」により、情報機器の基礎知識、利用法を学ぶ。「プログラミング実習1、2,3」によりプログラム言語を実践的に学ぶ。基本となるC言語をはじめとしてJava等最新の技術にも触れ、カーネルに近い基本ソフトからネットワークの応用ソフトまで総合的に学ぶ。第5セメスターには「データ構造とアルゴリズム」を配置し、ソフトウェアとデータ処理について高度な理論を学ぶ。
  5. 5.情報科学共通基礎科目群では、電気・電子回路、情報理論、数値計算、信号処理、画像処理等の基礎を学ぶ。
  6. 6.専門科目は、情報数理工学系科目、生体情報系科目を含み、基礎から研究レベルまでの科目が順に配置され自由に選択することができる。
  7. 7.その他、自己発展科目群により和英技術文書、プレゼンテーション、倫理、知的財産権などを学ぶことができる。また主専攻発展科目群を履修することにより、教員の研究レベルの専門科目を学ぶことができる。
  8. 8.教職課程科目と関連教科に関する科目に「情報」教員免許取得のための科目が全て網羅してある。

履修モデル

情報科学科は、情報の基礎的な科目のほか、広範囲にわたる学修分野の専門的学科目を配置している。その効果的な履修のため、科目群をわけて履修モデルを示している。まず情報科学基幹科目と基礎科目の履修をすすめ、卒業研究で深く研究したい専門分野を中心に、そこに推奨されている選択の専門科目を優先して選ぶのがよい。もちろん別に定められた必修科目は全て履修しなければならない。さらに共通の重要な科目も多数あるから、計画的に履修してほしい。

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