東海大学では1月29日に、第5回東海大学ヨーロッパ学術センター50周年記念QOLセミナー※「QOLとジェンダー:ジェンダーの壁と国際的な連携」をオンラインで開催しました。当日はWEBビデオ会議システム「Zoom」を使い、本学政治経済学部の辻由希教授、デンマーク国立音楽推進センタープロジェクトマネジャーのキャサリン・ルフェーブル氏、英国・ニューカッスル大学現代言語学部のギッテ・マリアン・ハンセン准教授、コペンハーゲン大学人文科学部SAXOインスティテュートのピーター・エデルバーグ准教授が講演。約120名が聴講しました。
初めに、政治経済学部の辻由希教授が「日本のジェンダーと政治」と題して講演。安倍晋三前首相による女性の社会進出と育児の拡大に向けた政策に触れ、任期中に達成されたものとそうでないものを解説し、「政策の成果は社会の関係者、特に企業経営者の認識と行動の変化に依存します。日本の福祉や雇用体制の方向性について全国的な議論は行われていないため、意見交換の場を設けていく必要があります」と課題を挙げました。ルフェーブル氏は、「QOLに溶け込むジェンダー」をテーマに、女性作家であるカーレン・ブリックセンのジェンダー観とデンマークで19世紀に起きた女性参政権運動等を踏まえて、現在のジェンダー課題と文化機関においての対策について講演。ハンセン氏は「現代日本の女性:村上春樹の視点」と題し、日本の小説では登場人物の一人称で性別や年齢、立場などが浮かび上がると提言し、日本の著名な小説家である村上春樹の作品を踏まえて解説しました。最後にエデルバーグ氏が、「デンマークでジェンダーを学ぶ理由:グローバル化された社会におけるローカルナレッジ」をテーマに、コペンハーゲン大学のDanish Cultural Courses(DCC)の留学生向けカリキュラムを紹介し、DCCが提供するジェンダー科目やデンマークにおけるジェンダー史、そして平等に対する価値観について講演しました。
※本QOLセミナーは、日本とヨーロッパ諸国との学術・文化交流の促進を目的として1970年にデンマーク・コペンハーゲンに開設したヨーロッパ学術センターの50周年を記念してシリーズ化して行っているものです。本学は日本で唯一、北欧の社会、歴史、文化、言語を研究と教育の対象とする文化社会学部北欧学科を有しており、50年以上北欧研究の先端を切り拓いてきました。セミナーの実施はこれまでの成果を広く社会に還元し、よりよい国際社会づくりに貢献することを目的としています。