工学部生命化学科の水谷教授の研究グループの論文が国際ジャーナル『Scientific Reports』に掲載されました

工学部生命化学科の水谷隆太教授の研究グループによる論文「Brain capillary structures of schizophrenia cases and controls show a correlation with their neuron structures」(統合失調症例および対照例の脳の毛細血管は、神経細胞の構造と相関を示す)が、6月3日に国際ジャーナル『Scientific Reports』オンライン版に掲載されました。この研究は、東京都医学総合研究所副所長・糸川昌成氏らと共同で行われ、日本学術振興会科学研究費助成事業の採択を受けたもの。水谷教授は生体組織の三次元構造を解析する専門家として研究を主導しました。

研究グループではこれまで、脳が委縮している状態の統合失調症は神経突起が蛇行し、細くなっていることを明らかにしています。今回の研究では、兵庫県にある大型放射光施設「SPring-8」でヒト脳組織の三次元構造をマイクロCT法により解析し、神経突起と毛細血管の曲率(曲がり方)が比例していることを解明。一方、毛細血管の直径は神経突起の直径に関係なく、一定であることもわかりました。このことから、統合失調症の脳組織では一定の太さを保つ毛細血管も蛇行しており、脳代謝のバランスを崩していると考えられます。今回の研究成果は、統合失調症における脳の代謝異常について重要なヒントを与えるものであり、原因に基づいた治療法の確立につながることが期待されます。

水谷教授は、「論文が掲載された後、統合失調症のお子さんがおられる海外の方から研究の発展を期待する旨のメールが寄せられ、世界的な要請があるとあらためて実感しました。脳組織には一人ひとりの個性があり、明らかになっていない特徴や機能も多くあります。今後はさらに症例数を増やし、研究を進展させたい」とコメント。また、「生命化学科は来年度から、全学的な改組改編計画『日本まるごと学び改革実行プロジェクト』の一環で生物工学科となる予定ですが、今回の研究はまさに生物学と工学の融合が成果につながりました。こうした研究実績を教育に取り入れ、学生の成長にもつなげていければ」と語っています。