工学部生命化学科の三橋准教授が責任著者の論文が国際ジャーナルに掲載されました

工学部生命化学科の三橋弘明准教授(マイクロ・ナノ研究開発センター兼任)と医学部医学科基礎医学系分子生命科学の中川草講師(総合医学研究所、マイクロ・ナノ研究開発センター兼任)、東京医科歯科大学の三橋里美准教授らの研究グループがこのほど、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)の原因遺伝子DUX4による異常な転写産物の同定に成功。その成果をまとめた論文が、4月1日に発行された国際ジャーナル『Human Molecular Genetics』に掲載されました。この研究は、文部科学省先進ゲノム解析研究推進プラットフォームの支援のもと、東京医科歯科大学、京都大学iPS細胞研究所、産業技術総合研究所との共同研究で行われました。

DUX4遺伝子からは「DUX4-fl」と「DUX4-s」と呼ばれる2種類のタンパク質が産生され、「DUX4-fl」はDNAに特異的に結合する転写因子に分類されます。「DUX4-fl」はさまざまな遺伝子を活性化する働きを持ち、筋細胞に本来必要のない遺伝子にも影響を与えることから筋ジストロフィーを発症すると考えられています。また、「DUX4-fl」が遺伝子以外の領域(非コード領域)からも転写を促進する事例が報告されていますが、従来の技術では非コード領域の塩基配列を正確に解読することが困難でした。今回、三橋准教授らのグループは、1万塩基以上の配列を解読できるロングリードシークエンサーの「ナノポアシークエンサー」を用いて「DUX4-fl」によって転写が促進される塩基配列を網羅的に解析。非コード領域からの異常な転写産物の塩基配列を詳細に明らかにしました。また、FSHD患者由来のiPS細胞においても同じ現象が示されたことから、FSHD病態との関連が示唆されます。

三橋准教授は、「ロングリードシークエンサーを使った研究実績のある医学部の中川先生、東京医科歯科大の三橋先生から協力を得られたことで、これまでとは異なる手法で研究に取り組むことができました。今回論文が掲載された『Human Molecular Genetics』は、遺伝性の病気に関する学術誌の中でも特に著名な媒体なので、世界中の研究者に読まれることでFSHDという難病の治療に役立つだろうと期待しています」と語りました。