情報通信学部

長谷川 恭子

「見て、理解して、考える」
 デジタル視考

研究概要

 数値シミュレーションや大規模計測、観測などのデータ収集によって、「ビッグデータ」が生成されています。このようなデータはいわゆる理工系のみでなく、文化財保存や、アナログデータを用いていた分野など、様々な研究分野でデジタル形式のビッグデータを活用するケースが増えています。「可視化」は大容量かつ多様で複雑なビッグデータをヒトが理解して考え、情報を引き出すために必要な技術です。本研究室では、以下の3分野で可視化技術の研究を進めています。

分野1:文化財の可視化

 近年、3次元形状を計測する技術がハードウェア・ソフトウェアともに発展し、誰でも簡単に計測ができるようになってきています。そのため、現存する文化財を後世に残すために、現状を計測してデジタルアーカイブ化する試みが行われています。詳細に計測された3次元のデータは大容量で、複雑な構造をもつ点群データが取得されます。このようなデータを扱うために、高速かつ高精細な可視化技術の開発が求められます。また、複雑な構造を理解するために中身を透視してみせる技術を開発しました。

分野2:科学研究を支援する可視化

 2011年の東日本大震災において発生した津波は、多くの被害を生じました。この震災では、津波渦と呼ばれる津波によって生じた渦によって、船舶の漂流や乗り上げなどの被害も発生しました。近い将来、南海トラフ地震が高い確率で発生するといわれています。このような状況において海洋分析は、防災に大きな貢献ができると期待されています。そのため、大規模シミュレーションデータを可視化し、渦の発生しやすい場所や時間帯を可視化によって分析する研究を行っています。

分野3:認知・心理を支援する可視化

 コミュニケーションを取ることが困難な人や、自分の気持ちを表現することが困難な人に有用な心理療法の一つとして箱庭療法があります。箱庭は患者の心そのものを表すため、容易に触れたり残したりすることなく、これまでは写真でしかデータを残すことができませんでした。そこで、大量に写真を撮って3次元計測を行うフォトグラメトリ技術を用いて形状データとして保存し、心理分析支援のための可視化技術を開発しています。また、計測したデータを仮想空間に再現することで、現実には入ることのできない箱庭を中から観測して心理状態の変化をセラピスト・患者ともに確認できるようなシステムを開発しています。