医学科の山本典生教授らが新型コロナウイルス感染症の治療候補薬「ネルフィナビル」の効果を明らかにしました

医学部医学科の山本典生教授(基礎医学系生体防御学)らが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療候補薬として、「ネルフィナビル」の効果を明らかにしました。4月8日には、生物学の査読前論文投稿サイト『bioRxiv(バイオアーカイブ)』に研究成果が掲載され、大きな注目を集めています。

ネルフィナビルは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症の治療薬で、HIVの増殖に必要なプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)の働きを阻害します。山本教授は、2002年から03年にかけて発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)の治療薬の迅速な実用化に向けて、既存のウイルス感染症治療薬のライブラリーと培養細胞を用いてスクリーニング(選別)し、抗ウイルス活性を検証。その結果、ネルフィナビルが強いウイルス増殖阻害効果を示すことをつきとめ、04年に論文を発表しました。さらに、現在、感染が拡大している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)についても、ネルフィナビルをはじめとする複数の既存薬の有効性を同じ手法で検証。ネルフィナビルがSARS-CoV-2に対しても同様の効果を示すことを明らかにしました。

山本教授は、「SARSは短期間で終息したため、ネルフィナビルは治療には使用されませんでした。しかし、”いつ同類のウイルスによる感染症が発生してもおかしくない”という危機感をもち続け、常に候補薬として視野に入れてきました」と振り返ります。「現在、COVID-19の患者さんを対象とした治験(薬の効果や安全性、適正な投与量や投与方法などを確認するための臨床試験)が長崎大学を中心に進められており、私も共同研究者として参画しています。同時に、国立感染症研究所、千葉大学、国立国際医療研究センターの研究者とともに、治療効果のメカニズムの分子レベルでの解明や、ネルフィナビル以外の候補治療薬の研究にも取り組んでいます。感染の拡大が止まらない中、有効な治療薬を少しでも早く人々に届けられるよう努力を続けたい」と話しています。

『bioRxiv』に掲載された査読前論文は以下のURLからご覧いただけます。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.04.06.026476v1.full