総合医学研究所が第24回公開研究報告会を開催しました

総合医学研究所が3月5日に伊勢原キャンパスで、「第24回公開研究報告会」を開催しました。この報告会は、本研究所の所員が1年間の研究成果を共有するために毎年同時期に実施しているものです。今回は7名が講演し、教職員や大学院生ら約60名が参加。新型コロナウイルス感染症対策を徹底して行いました。

本研究所は、基礎医学研究の成果を新技術の開発や臨床に生かし、総合的な医学の発展に寄与することを目的として1980年に創設。国内外から注目される多くの研究成果を発表しています。現在は、本学医学部の教員を兼務する研究者ら19名の所員が中心となって、生命科学統合支援センターの技術職員や先進生命科学研究所、マイクロ・ナノ研究開発センターの研究者らとも協働し、「再生医学」「ゲノム医学」「創薬」「血液・腫瘍学」「肝臓・腎臓病学」の5部門に関する研究に従事。学内の医学・生命科学・理工学系学部や研究機関との連携を推進するとともに若手研究者を育成し、医科学研究のさらなる活性化を図っています。

報告会では、初めに本研究所の安藤潔所長(医学部医学科内科学系血液・腫瘍内科学教授)が登壇。「コロナ禍でさまざまな制約がある中、皆さんの努力により順調に研究が進んだことをうれしく思っています。ぜひ活発なディスカッションをお願いします」とあいさつしました。続いて、特別研究員制度により登用された若手研究者3名と今年度のコアプロジェクトを推進する研究者1名、特に顕著な進展があった研究者2名が最新の成果についてプレゼンテーションし、今後の展開や臨床への応用などについて参加者と意見を交わしました。

特別講演では、今年度で退任する浅原孝之教授(医学部医学科基盤診療学系先端医療科学)が、「EPC:科学することの楽しさと難しさ」と題して自身の研究生活について紹介。留学したアメリカ・ボストンのタフツ大学で世界中から集まった気鋭の研究者としのぎを削った日々や、骨髄由来の血管内皮前駆細胞(EPC)の存在を世界で初めて確認し、権威ある学術誌『Science』に掲載されるまでの経緯などを振り返り、「新しい環境で一から出直し、人々の健康や医療の未来、研究の未来、EPCバイオロジーの未来のために、これまでに受けた“ギフト”を次の世代に渡したい」と語りました。

最後に松阪泰二次長(医学部医学科基礎医学系生体構造機能学教授)が、「充実した研究報告会になりました。今後もそれぞれのテーマを追究するとともに多様な分野の研究者らと連携協力し、医療の礎となる研究を発展させましょう」と結びました。

なお、当日の発表者とテーマは下記のとおりです。(発表順)
◇関根佳織【再生医療学研究部門】(基礎医学系生体構造機能学講師/特別研究所員)
「重症心不全に対する細胞シート移植による再生環境細胞治療の確立」
◇中川 草【ゲノム解析研究部門】(基礎医学系分子生命科学講師/特別研究所員)
「統合トランスポゾンデータベースを活用した癌トランスクリプトーム解析」
◇長谷川正徳【創薬・病態解析研究部門】(外科学系泌尿器科学講師/特別研究所員)
「フェロトーシス誘導による泌尿器科領域癌への新規治療戦略」
◇後藤信哉【創薬・病態解析研究部門】(内科学系循環器内科学教授)
※2020年度コアプロジェクト
「血小板メカノバイオロジーに基づいた革新的抗血小板薬の創製」
◇浅原孝之【再生医療学研究部門】(基盤診療学系先端医療科学教授)
※特別講演
「EPC:科学することの楽しさと難しさ」
◇岡 晃【ゲノム解析研究部門】(総合医学研究所講師)
「疾患原因変異の機能解析」
◇幸谷 愛【血液腫瘍学研究部門】(基盤診療学系先端医療科学教授)
「がんにおけるエクソソームの新機能とその意義」