理学部化学科の冨田准教授が研究代表を務める論文が国際ジャーナル「ACS Sustainable Chemistry & Engineering」に掲載されました

理学部化学科の冨田恒之准教授や同研究室に所属する博士研究員らが執筆した論文「Compact TiO2/Anatase TiO2 Single-Crystalline Nanoparticle Electron-Transport Bilayer for Efficient Planar Perovskite Solar Cells」が、2018年9月4日に発行された持続可能な化学・工学に関する専門誌『ACS Sustainable Chemistry & Engineering』に掲載されました。

この論文は、従来のシリコン型太陽電池に比べて必要なエネルギーとコストが小さい「有機ペロブスカイト型太陽電池」の作製において、電極となる二酸化チタンの製膜に400度から500度と高い温度を必要としていたところを、200度以下の低温で製膜しても約17%のエネルギー変換効率(従来の太陽電池は約15%から20%)を可能にする二酸化チタンの作製プロセスをまとめたものです。これまでは高温で作業する必要があったため、熱に強いガラス製の基板を用いて太陽電池が作られていましたが、今回のプロセスを活用すると、熱に弱い樹脂の基板を用いることができ、軽量でフレキシブルな太陽電池の作製に役立てることができます。冨田准教授は、「有機ペロブスカイト型太陽電池でエネルギー変換効率を上げる研究はさまざまなグループが行っていますが、その多くは光を吸収する部分(ペロブスカイト層)に焦点を当てたものであるのに対し、今回は土台となる二酸化チタンを変えることでエネルギー変換効率を上げることに成功したことが評価されました」と語ります。

この研究は、東海大学総合研究機構の2017年度プロジェクト研究「『人と街と太陽が調和する』創・送エネルギーシステムの開発」(研究代表=冨田准教授)にも活用されており、プロジェクトでは、フレキシブルな太陽電池の開発と無線送電システムの構築に加え、新しいエネルギー関連技術を取り入れた街づくりの研究に取り組んでいます。冨田准教授は、「今回掲載された論文は、私にとっては専門外であった太陽電池の分野に、これまで研究してきた二酸化チタンの合成手法を応用したことが功を奏したもの。太陽電池の研究だけ、二酸化チタンの研究だけ……という環境では生み出されなかった技術です。異分野を融合する意義を見出し、ほかの研究グループにも注目してもらえる価値ある研究になったと思います」と振り返ります。今後は、実際に樹脂製の基板に二酸化チタンを製膜し、エネルギー変換効率の検証実験を行っていきます。

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