国際原子力研究所が「特別公開講座-2022」を開催しました

国際原子力研究所では3月1日に、湘南キャンパス19号館で「特別公開講座-2022」を開催しました。本研究所は2020年度に開設し、国内外での原子力の平和利用の推進に寄与することを目的として研究活動に取り組んでいます。オンライン配信も併用し多数が参加しました。

講座はまず本研究所所属の櫛田淳子教授(理学部物理学科)が,「電子飛跡検出型コンプトンカメラによる医療ガンマ線イメージング」と題し、放射線を用いたがん診断の現状を紹介。がん診断装置「SPECT」に用いる放射線薬剤「テクネチウム-99m(99mTc)」についてと、この原料となる⁹⁹Moがほぼ輸入に頼っているため世界情勢の影響や⁹⁹Moを製造する原子炉の老朽化などで供給が不安定となっており、安定供給に向けた体制づくりが重要な課題となっていることを解説しました。そのうえで、京都大学と共同開発を行っている電子飛跡検出型コンプトンカメラ(Electron Tracking Compton Camera=ETCC)を紹介し、既存のがん診断装置より検出可能エネルギー範囲の広いという特徴を活かしたテクネチウム-99mに変わる新薬の開発や臨床利用に向けての取り組みについて説明しました。さらに、日本原子力科学研究所と京都薬科大学、本学が共同で展開する「Tc同位体を用いた医療用TC製剤とETCC臨床応用の開発」の現状を、ラットを用いた実験結果を交えながら解説し、「ETCCの臨床応用とTc同位体を用いた医療用Tc製剤の実現に向けた開発、実験を続けています」と語りました。

続いて、京都大学名誉教授で、同大複合原子力科学研究所附属粒子線腫瘍学研究センター研究員の谷森達氏が「ガンマ線完全可視化技術の確立と放射線科学への応用」をテーマに講演。発見以来120年以上にわたって見えないと言われてきたガンマ線(γ線)の完全可視化に向けて取り組んできた定量2次元画像解析をはじめ、ガンマ線オンライン定量3次元線量解析、イメージング分光による定量的放射能分布計測といった研究について紹介するとともに、世界で初めて銀河MeVガンマ線直接観測に成功した経緯や、東日本大震災で大きな被害を出した東京電力福島第一原子力発電所でのイメージング分光法の実証として取り組んだ遠方測定、京大原子炉での微弱放射能拡散イメージング、原子力施設における画像モニタリングと高精度放射能拡散予報の実現など多岐にわたる研究成果を披露しました。

両講座の終了後には、参加者から多数の質問が寄せられました。