農学部主催「熊本地震追悼式」を行いました

農学部では4月16日に「熊本地震追悼式」を行いました。2016年4月14日と16日の2度にわたって最大震度7を記録した平成28年熊本地震では、熊本県内に居住する本学の学生、教職員が多大な被害を受けました。特に阿蘇実習フィールド(旧阿蘇キャンパス)とその周辺地域では甚大な被害を受け、本学農学部の学生3名の尊い命が奪われました。式は地震の発生からの節目を迎えるこの時期に、熊本地震で亡くなった方々をあらためて追悼することを目的としています。今年度は午前中に阿蘇実習フィールドにおいて農学部の教員と九州キャンパスの職員、卒業生、地域住民ら約20名が参列して黙祷を捧げました。また、今年度からより多くの学生、教職員の参加が可能になるように開催した熊本キャンパスでの式では、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を図りながら教職員や学生ら約120名が参列しました。

熊本キャンパスの式では、初めに参列者全員で黙祷を捧げた後に、荒木朋洋九州キャンパス長が追悼の言葉を述べ、「熊本地震から5年が経過しましたが、我々はかけがえのない仲間を失い、今なお哀惜の念に堪えません。ご家族の皆さまにあらためてお悔やみ申し上げます。農学部は阿蘇での実習のための新棟2棟を活用して順調に実習を行っています。今年は崩落した阿蘇大橋に代わり、新阿蘇大橋が完成して生活道路が完全に復旧しました。また、空港に隣接する新キャンパスも着工し、2023年4月の竣工を目指して工事が進んでいます。震災後、復興計画に対して熊本県や南阿蘇村をはじめ多くの方々に温かいご支援を賜り、新しい農学部をつくり上げていく努力を重ねています。ぜひ見守っていただきたいと思います」と語るとともに、「震災時に阿蘇キャンパスで学んだ最後の学生諸君は卒業し、現在の農学部生は阿蘇で暮らしたことがありません。しかし、学生諸君によるチャレンジセンター・ユニークプロジェクトの『阿蘇復興への道』や有志による『阿蘇の灯』による活動などでは、震災後に入学し震災を体験していない学生諸君が引き継いでくれています。このような学生諸君や教職員とともに、熱い農学部の魂を絶やすことなく、新しい農学部をつくり上げていくことをあらためて約束いたします」と決意を語りました。

また、農学部の岡本智伸学部長は、祭壇の横に掲げた松前達郎総長作詞による楽曲『阿蘇に生きる』の歌詞“山脈に拡がる緑 そのやさしさは母のぬくもり 熱き想いは空に舞い 阿蘇の大地をかけめぐる 涯しない夢に生きる若き命よ”を示しながら「夢を抱いた尊い若い命を失い、母のように優しく包んでくれた地域の方々の命を失い、早5年が経とうとしています。農学部には震災後も大きな夢を持った学生が入学し、学びを続けています。彼らはさまざまな形で熊本を活気づけるような活動を展開しています。その“挑み”は、我々の想像をこえる発想と活力に満ちあふれています。創造的復興とは、過去を知る私たちの世代が目指す“復帰”だけでなく、そこにとらわれない次の世代による“創造”が調和して果たされるものであり、これからの農学部が目指す発展の方向性だと感じています。いま、私たちは感染症の災禍の中、地球から大きく試されています。農学は自然のうねりに耳を傾け、自らの営みを省みて、これから私たちが自然の恩恵を持続的に享受していくための道筋を紐解くことができる、そういった学問だと思っています。また、農学部にはそこで貢献できる若者を育てていく使命があります。熊本県で唯一の農学部としての責務を果たすべく、私たちは使命感を持って進んでいくことを誓い、阿蘇の大地に若き命が抱いた、はてしない夢に対しての答辞といたします」と述べました。

さらに学生を代表して「阿蘇の灯」代表の野田良多さん(農学部応用動物科学科4年次生)が登壇。「私たちはこの災害を経験しておらず、私自身2度にわたる震度7の地震に、当時は恐ろしさを感じながらテレビで見ているだけでした。その後、東海大学に入学し、阿蘇の現状を目の当たりにして、この真実を語り継がなくてはならないという思いから阿蘇の灯で活動することを決意しました。復興は順調に進んでおり、以前のような学生の暮らしは戻らずともその歩みは一歩一歩前へと進んでいます。私たちにできるのは亡くなられた先輩たちの分まで前を向き、懸命に歩んでいくことだけです」と力強く誓いました。

最後に、教職員や学生ら出席者が順番に献花を行い、地震で亡くなった方々を追悼しました。