ヨーロッパ・アメリカ学科 中川先生のフランス実地調査の記録

2023年3月に、南フランス・ラングドック地方のガール県とエロー県にある中世ロマネスク教会の実地調査を行いました。ここにはその東のプロヴァンスと同じく、11世紀から12世紀にかけての古いキリスト教聖堂が数多く点在しています。中でもガール県のトレスク村にある「サン=ピエール=ドゥ=カストル礼拝堂」(11世紀後半)は、今回の目玉のひとつでした。村外れの山の上にポツンと建っています。かつては古代末期の土着ガリア人のオッピドゥム(要塞都市)があったとも言われているところで、アクセスしにくい場所です。
レンタカーを借りて行ったのですが、登りの細いダートの山道でパンクしてしまいました。しかも最近のレンタカーはスペアタイヤが積まれていない! レンタカー会社の24時間緊急救援アシスタントの非常用電話もつながらず、やっとつながっても要領を得ず、すったもんだのあげく、修理されたのはなんと翌日の午後でした。「24時間緊急救援」の意味が分かりません。さすがフランス(笑)。ここまで苦労したので、なんとしてもそのロマネスク聖堂に行かなければと思って再度挑戦しました。ただし今度はダートの山道の下にクルマを置いて片道30分歩きました。
「サン=ピエール=ドゥ=カストル礼拝堂」は非常に古くて、味わい深い姿で私を迎えてくれました。壁面の石積みや半円形の後陣、入口の装飾彫刻、そして内部の古くてひなびた様子など、まだこんな聖堂がちゃんと残っているんだなぁと思いました。不便な場所にあるゆえに趣のある姿が残ることになったのでしょう。苦労して訪れた甲斐があったというものでした。