講演会「私の『アイヌ』~二風谷の育ちから~」を開催しました

国際学部国際学科では1月17日に湘南キャンパスで、アイヌにもルーツを持つ関根摩耶さんを講師に招き、講演会「私の『アイヌ』~二風谷の育ちから~」を開催しました。本学科が開講する授業「Global Action Advanced A」のプロジェクト「北海道アイヌ研修」の一環で実施したものです。

関根さんは母方の家系がアイヌで、住民の8割以上がアイヌにルーツを持つといわれる人口300人台の集落、北海道平取(びらとり)町二風谷(にぶたに)の出身。当日は、本授業の履修生をはじめ、国際学科の学生や教職員らが多数聴講しました。講演に先立ち、荒木圭子教授(国際学部長)が関根さんから学生たちに向けて出された2つの課題「アイヌのイメージ」「自分にとって『言葉』とは?」を提示。関根さんが世界の少数・先住民族を訪ねたドキュメンタリー番組の映像を紹介しました。

講演は、アイヌ語による短い自己紹介の後、男性と女性の所作を教え、参加者が「イランカラプテ」と言葉と身振りを交えたあいさつを交わしてスタート。関根さんは、「船の民族」「交易の民族」などと呼ばれることもあるアイヌ文化の概要や、繊細なサラブレッドを育む地としても知られ、住民の多くが織物や木工など工芸の技術を持っている二風谷の風土について話し、そこで暮らしてきた曽祖父母や祖父母、両親などの家族について多くのエピソードを披露。「アイヌ文化では名前は一番の個人情報なので気軽に教えません。このように自分の育った環境や大切に思うことなどを話し、互いに共通点などを探りながら親しくなっていきます」と話しました。

続いて、全てのものに宿るとされる「カムイ」についてさまざまな例を挙げて説明し、「アイヌはいろいろなものに役割を持たせる文化。“ごみ”を意味する言葉がないように、この世に意味のないものはないと考えます」と説明。また、日本語からアイヌ語になった単語、逆にアイヌ語から日本語に取り入れられた単語などを紹介し、ヒグマを指すだけでも70単語以上あるとされること、逆に色に関しては4色しかないというアイヌ語の特徴や豊かな口承文芸について触れ、「私たちは効率的な言葉を重視するあまり、見えにくくなっているものがあるのではないでしょうか。今日の話が皆さんにとって、人としてどう生きるか、文化や風習から自分とは何者かを考えるきっかけになれば」と締めくくりました。

終了後はアイヌの食文化や、社会の変化の中で自らをどう捉えるのか、さらに先住民族としての支援や文化保護への取り組みに対する考えなど、多様な質問がありました。関根さんは自身の思いを話し、「アイヌとは人間らしい人間、尊敬できる存在を意味するもの。さまざまなことを考え、私なりにそのようなアイヌになれるよう頑張りたい」と話しました。