情報通信学部

倉重 宏樹

人間の脳情報処理から
AI・教育・医療へ!

研究概要

人の学習の認知・脳メカニズムを探る

 脳は学習を通じて自らのうちに知識を構築します。この知識が我々人間の認識や思考、行動を形づくります。したがって人の知識の構築原理を知ることは、人とはどのような生き物なのかを知るために最も重要な課題の一つと言えます。

 まず大事なことは、人は外界の情報をなんでもかんでも無分別に取り入れているのではないということです。むしろ「自ら積極的に取り入れるべき情報を選んでいる」と言えます。こうすることで人は自分が持つ知識をより有用にしていると考えられます。

  私はこのような知識の構築原理を研究しています。発見した現象の一つに、人はなにかを学習する前に学習対象の脳内での表現を作り、それを選択的に取り入れるというものがあります(図1)。

図1 知識の選択的獲得に寄与する事前準備脳活動

 脳は自分の知識がどうあるべきかの設計図を自ら描き、これを作るように学習を行っているということなのかもしれません。このような積極的選択の結果として、我々の適応的で創造的な知識が出来上がっているのでしょう。

脳科学からAI開発・教育・医療に貢献する

 脳の解明を目指す基礎研究のほかに、脳科学をAI開発や教育や医療に役立てる応用研究も行っています。

 医療応用を目指した研究としては、近年発展著しい深層学習と呼ばれるAI技術と脳科学の手法を用い、安全で手軽な脳活動への介入技術の開発を進めています。また人が自分のなかにすでにある知識を再編成する過程の脳メカニズムを調べる研究も進めています。これは教育学で誤概念の修正と呼ばれるものに関わります。

 AI開発に脳科学を活かす研究として、脳のなかで視覚処理に用いられている「視覚特徴量」というものを同定し、これをAIに組み込む研究も行っています(図2)。これは脳のように情報処理を行うAIにつながります。

図2 脳で使われている視覚特徴量をAIに組み込む