情報通信学部

西口 宏美

誰もが働きやすい
職場環境をつくるには

研究概要

 経営システム工学は、モノづくり(生産)の現場やサービス提供のプロセスにおける効率化を考える学問です。私の研究室では、モノづくりやサービス提供の現場で働く人々にとって快適で働きやすい職場環境に改善するための方策について研究を進めています。働く人々といっても、人それぞれ身体機能が異なります。病気や外傷、あるいは加齢(Aging)によって身体機能が低下してしまうと、職務遂行の場面で自分の能力を十分に発揮することができなくなってしまう可能性があります。このような場合には、まず身体機能がどの程度低下してしまっているのかを把握し、低下した機能をどのように補助すればよいのか、あるいは他の機能を使って ” できないこと ” を ” できるようにする ” ことはできないかを考えていきます。

図1  ”できないこと”を”できるように

研究例:脳性まひ者のマウス操作の効率化

 印刷会社で働く、脳性まひにより上肢に運動障害を持つ従業員から仕事で使う PC 画面上のマウスポインタの動きが速く(感度が高く)、使いづらいという声がありました。そこで、アイコンの大きさやマウスポインタのスピードを変化させて、使いやすい条件を実験的に求めてみました。 その結果、15 インチサイズの PC 画面のメニューアイコンの通常の大きさ(一辺6mm)では、移動距離Aを30mm、90mm、150mmの3 条件に設定した場合、マウスポインタの感度(D/Cgain)を変化させると、作業時間値(MT)を最小にするマウスポインタの動く速さが存在することが確認できました。このことより、PCをマウスで操作する場合には、使用する人の操作特性に合わせてマウスポインタの感度を変化させると、速く(つまり効率よく)作業をすることが可能になるのです。以上は私の研究室で行っている研究の一例ですが、その他にも高齢者にとって働きやすい職場の研究、さらには超高齢社会を迎えた日本において重要な課題となっている介護サービスの効率化に関する研究も進めています。

図2  実験の様子
図3 マウスポインタの感度と作業時間値との関係