情報通信学部

高山 佳久

光の空間伝搬を用いた通信システム

研究概要

 重要な社会基盤の一つである情報通信ネットワーク技術は、有線による通信技術と無線による通信技術で構成されています。光の空間伝搬を利用する通信は無線技術に含まれ、電波での通信と比べて小型の装置で、大容量データ伝送を提供できる技術として、移動体を用いた通信や、宇宙と地上との通信への適用が期待されています。
これまでに国内外の機関において、光通信装置を搭載した衛星や航空機を用いた実証実験が行われ、その有効性が確認されました。現在は、この技術の適用範囲を広げる研究と、実証された技術の実用化を図る研究がそれぞれ進んでいます。

 大学教育には、将来の情報通信ネットワーク技術の発展のためにも、積極的に研究開発を遂行できる人材の育成が期待されています。当研究室では、光の空間伝搬を用いた通信システムを研究対象にして、このような期待に応えようとしています。最近は、主に以下のテーマに着目して活動を行っています。

「空間光通信のシステム構成に関する研究」

 移動体を用いる通信では、自局と相手局との距離や方向が動的に変化します。また、移動体に搭載する通信装置の寸法や質量、使用電力などには、機体に応じた制限が生じます。このため、通信の成立性と移動体への搭載性の両方の向上を目指し、送信系と受信系の機能性能の配分や、互いに相手局を捉えて通信回線を安定させる手法などを検討しています。また、空間光通信では、意図しない対象が光の照射領域に到来する可能性があります。このため、データ伝送の効率化と同時に、光の射出方向の高精度な検出や、地上からの高強度な光の射出を不要とする手法など、レーザ光照射における安全性も考慮した検討を進めています。

「光の伝搬特性に関する研究」

 地上で星を見上げると、宇宙から到来する光が大気の影響を受け、瞬いて見えます。空間を伝搬するレーザ光にも同様の現象が生じ、これが光通信回線の不安定化や、通信品質の劣化の原因となります。そこで、大気が光へ与える影響を理論と実験の双方から評価し、その低減方法を検討しています。また、これらの評価手法を応用し、水中を伝搬する光の特性評価も実施しています。