東海大学付属の浦安、高輪台及び相模の中等部において、法教育を実施しました。

法教育とは、法律専門家でない市民を対象に、法、法過程、法制度、これらを基礎づける基本原則と価値に関する知識と技術を身につけてもらう教育であり、自由で民主的な社会を構成する市民の育成の一助となるものです。法教育は、事前規制社会から事後規制社会への変革という司法制度改革の一環として、法務省が主導して検討が進められてきており、今では、大学、裁判所、弁護士会、司法書士会など、多様な機関で実施され、社会に定着しつつあります。

法学部法律学科では、かつて法務省法教育研究会の委員として、我が国における法教育の在り方の検討に参画したことのある、唐津惠一教授の指導の下、法学部法律学科の学生が先生となり、付属校に出向いて法教育の出前授業を行っています。

今年は、2月29日から3月11日の間に、浦安高校中等部1年・2年・3年全12クラス、高輪台高校中等部2年1クラス及び相模高校中等部2年3クラス、合計16クラスで50分の法教育を実施しました。

今年は、「ルールづくり」に関する体験的な授業を行いました。

様々な考え方を持ち、多様な生き方を求める人々が、お互いの存在を認め合い、多様な考え方や生き方を尊重しながら、ともに協力して生きていくためのルールをどのようにして作っていくか、ということを生徒たちには体験的に学んでもらいました。

生徒たちに身近な題材として、「地球温暖化による真夏の酷暑の中での夏の甲子園大会開催ルール」を取り上げ、「阪神甲子園球場」という場所で、8月初旬から17日間というタイトな日程で行われる、という現在のルールをどう評価するか、ルールを変更するとすればどのようなルールが良いか、ということについて、多様な意見の存在を前提に、グループごとに議論して結論を導く、という流れで授業を進めました。

法学部法律学科の学生の先生が、うまく生徒たちの議論を主導し、生徒たちには、自分の意見をしっかり持ったうえで、それを相手に適切に伝えることの大切さ、多様な意見の存在を前提に結論を導くための方法論等、民主主義社会において必要となる能力やスキルを認識する良い機会になったと思います。

フィールドとして場を与えていただいた付属高校の先生方には改めて感謝したいと思いますし、来年もまた実施したいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

【付属高校中等部の生徒たちの感想】

・「1つの題材についていろいろな立場の人の意見を考えたりするのがすごく楽しかったです。ありがとうございました。」

・「法律には難しいイメージがありましたが、実際に話を聞いたらそんな感じはせず、楽しい時間を過ごせて、おもしろかったです。」

・「とても分かりやすくためになる授業でした。野球の甲子園という例えを出していることやはっきりとした声がとても良かったです。」

・「話し合いの場面で、みんなで決めるのがとても良い経験になりました。」

・「私はYouTubeでよく法律のことを話しているチャンネルを見ていますが、それよりもわかりやすかったです。」

・「私は法講座で、みんなの意見を尊重してルールを作ることが大変なことに改めて気付かされました。今まで私たちの身近に当たり前のようにあったルールですが、実際に自分たちが作ってみて様々な視点から物を判断する力が身につきました。また、自分達が作ったルールや決まり事によって利益も損失も発生するため、それらを作る場合は責任も必要なんだなと感じました。しかし、全員が納得するようなもの作ることはとても難しいことです。より多くの人に納得してもらうルールをつくるためには、誰かの要望を、誰かが受け入れて我慢し尊重しあうことが必要なのです。そのため、ルール作る側も守る側も、それを理解した上で生活していくことが大切なのだと思いました。」

・「僕は今回の講座を通して、法を作ることの難しさ、作ったことによるメリット、デメリットを 感じることができた。講座では、夏の甲子園を題材に話し合った。年々、地球温暖化の影響で猛暑が続くなか、甲子園をあり方についてをグループごとで議論した。ここでは、甲子園をするときは、直射日光を受けないドーム球場でやる、プロ野球のようにナイターの時間を使ってやるなどの意見が出た。しかし、これらにはメリットデメリットがあり、ナイターの時間でやると近隣の人達に迷惑がかかってしまう。高校球児達にとって甲子園球場は聖地と言っても良い場所で、そこでできないのは嫌だなどの意見も出た。このように、法を作るときは作った場合どうなるか、それによって人々にどの様な影響を受けるのかを考えていかなければいけない。もしまたこの様な機会があれば、僕は皆んなが納得してくれる様な法を作りたい。」

・「今回の法教育では、法の下で暮らす私たちが学んでおくべき基礎知識を、この特別な授業で得ることができました。新たな法が生まれて、ときには納得できないものでも守ることで、確保される安全があったり、私たちが安全に生活する上で欠かすことのできないルールも様々な討論を経て成り立っているものなので、一つ一つのルールを大切に扱わなければならないと改めて感じました。そして、私たちが大人になっていく上で、法を意識する機会が増えてくるし、さらに成人年齢が引き下げられたので、今回の法教育という授業の場があることは、とても重要で、これからの私たちの暮らしに沢山の場面で生きてくると強く感じました。」

・「この講座を通して法や作ることの大変さを学ぶことができました。初めに、法とは信号の赤と青のように当たり前に守らなければならない「ルール」だと言うことを教えて頂きました。その次に実際にルールはどうやって作るのかの体験をしました。夏の甲子園のあり方を題材に班に分かれて、甲子園で行うべきかドーム球場で行うべきかなどの意見に対して賛成か反対かを話し合いました。夏の猛暑の中での甲子園は昨年熱中症で倒れた人が多かったそうです。しかし、甲子園という舞台でやるからこそ価値があるという意見もあり、それらを全て考えてルールを作るのはとても難しかったです。様々な人の意見を踏まえて誰もがいいと思えるルールを作るのは難しく大変だと言うことを学ぶことができました。18歳から選挙権が与えられ、法に関わることになるので、この講座で法ということを学ぶことができとても良かったと思います。」

・「僕は、法教育の授業を受けてそもそも法というものはどうゆうものなのか基本的なことを教えてもらいました。今回の授業では、夏の全国高校野球選手大会をテーマについてルールを考えました。そのルールを考える時に選手のために考えて作るルールなら全部採用しても大丈夫だと思っていましたが選手の意見だけではなく周りの人の意見にも耳を傾けなければいけないことに授業を通して気づけました。例えば、ドーム球場で行うかに対して最初は外でやるよりも直接日光が当たらないから暑くないので選手にとっていいと思っていたが選手としては甲子園の球場でやることに意味があると言われそうゆう意見に気づかず一方的に考えてしまっているということを含めルールを考えなければいけないんだと思いました。授業を通して法を決める作る時にいいことだけでルールとして決めるのではなく反対意見も聞いた上で考え決めていくことが大切だと授業を通して学びました。」

・「昨日の受けた法講座はとても興味深いものでした。僕たちは、夏の全国高校野球選手権大会を題材に取り上げ、温暖化による猛暑下の大会開催に関するルール作りを体験しました。最近の温暖化の影響で猛暑下での大会開催が問題視されていますが、そのルール作りについてディスカッションを行うことで、その課題に対する理解を深めることができました。猛暑下での大会開催に関しては、選手の安全を守るために様々な対策が必要とされます。例えば、試合中の水分補給や休憩時間の確保、投手の球数制限などが挙げられます。また、気候変動の影響を受けている現代では、これまで以上に積極的な対策が求められます。例えば、大会の開催時期や時間帯の変更、過酷な条件下では試合の延期などが必要です。このような議論を通じて、法律や規則の重要性やそのプロセスについて理解を深めることができました。今回の講演を通して、法について少し身近に感じることができました。今後、自分の意見を明確にし伝える、コミュニケーション能力を身につけたいです。そして社会を構成する一員としてルールや法律を作ることに関心を持ちたいと思いました。」

・「今回は貴重な体験をさせてくださりありがとうございました。私は法学部の方から受けた講習会で沢山のことを学びました。4、5人で行ったグループワークでは夏の甲子園のあり方について考えました。例えば、試合は昼に行うか朝、夕方に分けて行うか、球数制限をするかどうかなど高校球児の安全や試合自体の面白みを考えながら話し合いを進め、発表しました。私はあまり野球を好んで観戦するということはなく、ルールもあまりわからず、題材によっては話の流れについていけない時もありましたが、グループの班のみんなや他のグループの人たちが話しているのを聞いて意見を出し合うことができました。今の時代でも高校球児の安全が完全には確保できていない状況にあるところもあるのでこの特別授業を通し、より関心を持つべきだと思いました。また、私は今まで法律は難しいものだと思い込んでいましたが、今回、授業を受けて意外と身近にあるものでも体感できると知り、これからももっと関心を持って生活していきたいと思いました。」