医学部付属病院がタイの生体工学技士(BME)を対象とした研修をオンラインで実施しています

医学部付属病院では12月15日から、タイ・ランシット大学医用生体工学部の卒業生らを対象とした生体工学技士(Biomedical Engineer=BME)研修をオンラインで実施しています。この研修は、タイにおけるBME制度の確立や人材育成に協力するため、国立国際医療研究センター国際医療協力局「医療技術等国際展開推進事業」の採択を受けて昨年度から開講しているものです。今年度は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行を受け、「来るパンデミックに備えた重症患者治療機器管理へのタイ型生体工学技士の新しい役割―日本の臨床工学技士制度の経験に基づいて」をテーマに設定。本病院の医師や臨床工学技士(Clinical Engineer=CE)、医療機器メーカーの技術者らが講師を務め、WEBビデオ会議システム「Teams」を使って行いました。

研修は3日間ずつ2回開講し、各10名が受講。第1クールは15日から17日まで実施しました。オリエンテーションでは医学部医学科の木ノ上高章准教授(基盤診療学系衛生学公衆衛生学)が、タイのプミポン前国王(ラーマ9世)と本学の創立者・松前重義博士との交友から始まった両国の学術交流の歴史に触れながら、研修の趣旨やプログラムを説明。また、日本の医療制度と医学教育制度、急速に進む少子高齢化やCOVID-19への対応についても解説し、「タイでも少子高齢化が進み、日本と似た状況になる可能性があります。日本の経験をぜひ母国の将来に生かしてほしい」と語りました。

研修では、CEが体外式膜型人工肺(ECMO)や人工呼吸器、血液浄化装置、薬剤を投与するための輸液ポンプ、シリンジポンプの構造や保守管理方法について講義し、医療機器メーカーの技術者が実機を用いて使用方法を解説。重度の呼吸器疾患の治療に欠かせないECMOについては、臨床現場で使われている様子をVRで体験してもらったほか、日本におけるECMO治療を牽引している済生会宇都宮病院救急・集中治療科の小倉崇以医師を招いての特別講演を行いました。また、輸液ポンプとシリンジポンプについては、タイにある医療機器メーカーの支店の協力を得て、ランシット大学に実機を持ち込んでの操作実習も実施。さらに、CEが日本の臨床工学技士制度の変遷や多職種連携医療の重要性について講義しました。

中心になって企画・運営した診療技術部臨床工学技術科の西原英輝科長補佐は、「今回はCOVID-19の治療に使われる機器を対象としました。BMEだけでなく看護師やメディカルテクニシャンらも参加したため研修員同士の情報共有ができ、私たちもタイの医療現場の状況を知ることができました。研修員からは、“機器の保守管理や使用方法はもちろん、COVID-19の治療に日本のCEがどのようにかかわっているかがわかり、大変有意義でした”といった感想をもらっています。日本のCEが歩んできた道のりを、タイのBME制度の確立に役立ててもらえればうれしい。双方の医療の充実を目指して今後も事業を継続したい」と話しています。

なお、この取り組みの一部は、「東海大学医学部付属病院診療技術部TRICOLORプロジェクト」として、2020年度松前重義記念基金の国際活動助成にも採択されています。