経済学科に林良平講師が着任しました

政治経済学部経済学科に今年度から、林良平講師が着任しました。林講師は、『合理的な経済人』などこれまでの経済学がモデルとしていた人間を前提とせず、『生身の人間』を対象として、置かれた状況や行動、その結果を究明する行動経済学が専門です。特に、教育や労働、スポーツなどのデータを用い、ともに働く同僚や友人の生産性が自らの生産性に与える影響や、スポーツにおけるライバル関係が影響し合う効果を指す「ピア効果」にスポットを当てた研究に取り組んでいます。大学までは水泳の競技者として活躍し、卒業後はモンゴルナショナルチームなどのコーチを務めた経歴を生かして、日本国内で行われる競泳の大会で記録されたおよそ600万件におよぶデータを用いた研究を展開。ある選手が試合に臨んだ時に両隣に他の選手がいる場合と片方のみいる場合のタイムの違いや、タイムの早い選手と遅い選手が並んだ場合の影響などについて分析しています。また、それらの研究成果をもとに企業などの職場で同僚の能力が各個人にどのような影響を与えるのかといった課題への応用にも取り組んでいます。

今学期から開講している2年次生のゼミでは、人々が意思決定やある選択に至るメカニズムについて、実際の行動を調査する実験を行っています。「例えば『50%の確率で1万円が当たり、50%の確率でなにも得られないくじ』と『くじ引きなしで5,000円もらえる』のどちらかを選ぶ場合、期待値としては変わらないはずなのに多くの人は5,000円をもらう方を選びます。これは人の心理に『確実性効果』と呼ばれる偏りがあるためです。こうした実験の結果をもとに、選択行動の裏側にある関数を調べていきます」と林講師。「伝統的な経済学に比べて、行動経済学では実験のアイデアが重要です。学生の若く柔軟な思考から出てくる発想こそ研究の推進に役立つと考えています。学生たちには日ごろの些細な疑問を調べることでノウハウを身につけてもらいたい。さらにデータを収集することで、数値を見るだけではわからない『データを得るために必要な要素』を感じ取り、視野を広げてもらいたいと考えています」と話しています。

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