熊本キャンパスで第18回アジア農業シンポジウムを開催しました

熊本キャンパスで12月8日に、第18回アジア農業シンポジウム(主催・学校法人東海大学、東海大学)を開催しました。この催しは、アジア諸国における食料・農業問題をアジア全体で考えていくために、農業分野の研究活動の成果を共有し、研究者間の交流を深めることを目的として1982年から開催している国際会議です。国際的学術交流の推進という理念の下、農学部が主体となりアジア諸国の大学・研究機関と連携して継続してきました。

今回のシンポジウムは2016年に発生した熊本地震の影響で開催を延期していましたが、農学部再建に向けた取り組みの一環として開催が実現したものです。「災害が農業に及ぼす影響―事例研究と展望―」をテーマに、口頭発表とポスター発表、パネルディスカッションなどを実施。熊本県の蒲島郁夫知事による基調講演をはじめ、九州キャンパスの教員や企業、タイやインドネシアなどから集った国内外の研究者が研究成果を発表したほか、ポスター発表やその中から短時間で口頭発表するショートトークでは農学部生や大学院生、熊本県内の高校生も多数参加し、農業にまつわる日ごろの研究やプロジェクト活動の成果を披露しました。高校生の発表は蒲島知事も視察し、「命と文化が光る、笑顔の里づくりを目指して~地域資源の発掘と、新たな農村経済のしくみづくり~」(熊本県立菊池農業高校「グリーンライフ研究班」)や「15(ひご)野菜~熊本市の伝統野菜は私たちが守る~」(熊本県立熊本農業高校)といった研究内容を生徒たちが披露。蒲島知事は一つひとつ熱心に耳を傾け、生徒たちに質問していました。

学生や教職員、地域の高校生や住民ら約300名が来場した当日はまず、山田清志学長が開会のあいさつに立ち、参加者への謝辞を述べるとともに「今回は16年に発生した熊本地震を受け、農業と災害に焦点をしぼったシンポジウムを行うことになりました。アジア各国からも多くの先生方にご参加いただきましたので、有意義な会合となることを期待しています」と語りました。続いて基調講演に登壇した蒲島知事は、「熊本地震からの創造的復興」をテーマに熱弁。「『不可能を可能にする』がキーワード。熊本地震が発生し、よりよい熊本をつくることは無理ではないかと思ったこともあるが、自らの経歴を省みて不可能を可能にすることが大切と思いなおし、その思いを県民に訴えました」と語り、農業研修生としてアメリカへと渡り、それがきっかけとなってアメリカ・ネブラスカ大学、ハーバード大学大学院で学んだ経歴を紹介。「その後、筑波大学、東京大学で教鞭をとったのち、熊本県知事となりました。県政はまさに『不可能を可能にする』ということです。熊本地震からの復興に当たっても、県民の苦痛を最小化し、もとよりいい状態に戻す創造的復興を成し遂げ、熊本のさらなる発展に貢献するという原則を掲げて対応してきました」と話し、さまざまな施策を紹介し、「今後もよりよい熊本を目指して復興に取り組んでいく」とまとめました。

口頭発表では「災害が地域社会に及ぼす影響」と「災害が農牧業に及ぼす影響」の2つのセッションに8人の研究者が登壇。熱心な質疑応答も繰り広げられました。最後にはパネルディスカッションも実施し、シンポジウムの事務局長を務めた農学部の村田浩平教授の司会進行の下、タイ・モンクット王ラカバン工科大学、同・コンケン大学、インドネシア・ボゴール大学、同・パジャジャラン大学、本学農学部の研究者らが災害への備えや被災時の対応、農業における後継者不足の問題など長期的、国際的視野に立った研究について話題提供と意見交換を展開しました。最後に村田教授が「自然災害は人々の生活に影響します。全世界の人のために新しい手法で災害のリスク削減に取り組んでいかなくてはなりません。まさに蒲島知事がおっしゃった“不可能を可能にする”ことが必要です。今後も我々は将来に向けて何をすべきかしっかり考えていきたい」と総括しました。

閉会にあたって荒木朋洋九州キャンパス長があいさつし、本シンポジウムの歴史と意義を振り返りながら、「今回は自然災害に目を向けた内容となりましたが、熊本地震では我々農学部も大きな被害を受けました。自然災害は世界中で起きていますが、我々の経験が皆さんの役に立つことを願っています」と語りました。その後、サプライズゲストとして熊本県PRマスコットキャラクターのくまモンが登場。「くまモン体操」を披露し、参加者との記念撮影も行い、イベントに花を添えました。

口頭発表者とパネルディスカッション登壇者は以下の通りです。

◆口頭発表・セッション1:災害が地域社会に及ぼす影響(座長 阿部淳教授・東海大学農学部応用植物科学科)
「災害がインドネシアにおける農業生産に及ぼす影響」 インドネシア・ボゴール農科大学農学部学部長 スワルディ氏
「災害が農業に及ぼす影響―事例研究と展望―」 タイ・モンクット王ラカバン工科大学農学部准教授 モントン・ガンマニー氏
「東日本と熊本における二度の大地震と復興への取り組み」 東海大学農学部バイオサイエンス学科 木下英樹講師
「熊本地震による医療機関の被災と対処」 東海大学基盤工学部 岩橋正國学部長(医療福祉工学科教授)

◆口頭発表・セッション2:災害が農牧業に及ぼす影響(座長 星良和教授・東海大学農学部バイオサイエンス学科教授)
「熊本地震から畜産現場での自然災害における減災を考える」 東海大学農学部 岡本智伸学部長(応用動物科学科教授)
「災害・気候変動に対応できる農業の実現について」 東海大学農学部応用植物科学科 松浦朝奈准教授、農学部モニター農家 山戸陸也氏
「気候変動における動物生産に関する研究戦略」 タイ・コンケン大学農学部学部長 モンチャイ・ドゥアンジンダ氏

◆パネルディスカッション(座長 村田浩平教授・東海大学農学部応用植物科学科)
モンクット王ラカバン工科大学農学部学部長 モントン・ガンマニー氏
同農業産業学部 プラパン・ピンシロドム氏
コンケン大学農学部学部長 モンチャイ・ドゥアンジンダ氏
ボゴール農科大学農学部学部長 スワルディ氏
パジャジャラン大学学長 トゥリ・ハンゴノ・アハマド氏
同農学部副学部長 デニ・クルンニアディ氏
東海大学農学部 岡本智伸学部長

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