阿蘇実習フィールドで地域循環共生圏シンポジウムを開催しました

阿蘇実習フィールドで12月8日、地域循環共生圏シンポジウム「地域みんなで進める阿蘇の創造的復興、草原再生との連携~地域と関わりのある様々な研究や取組、そして今後の展開~」を開催しました。本学では、環境省ならびに熊本県と2017年度に「阿蘇地域の創造的復興に向けた地域循環共生圏の構築に関する協定」を締結しているほか、今年5月には、県と南阿蘇村が環境省の「平成31年度 地域循環共生圏づくりプラットフォームの構築に向けた地域循環共生圏の創造に取り組む活動団体」事業に採択されており、本学も協力として参画しています。シンポジウムは、これらの活動の一環で、阿蘇地域の創造的復興と草原の利活用について考えるとともに、住民らに関心を高めてもらおうと、環境省、県、村、本学の4者で主催したものです。

当日は、関係者や地域住民ら約100名が参加。開会のあいさつでは南阿蘇村の吉良清一村長が、「3年前の熊本地震で南阿蘇村は大きな被害を受けました。復興は徐々に進んでいますが、地域の草原を維持するための野焼きはまだ完全には再開できていない状況であり、県とともに取り組んでいきたいと考えています。今回のシンポジウムが有意義なものになることを願っています」と話しました。第1部では、基調講演として阿蘇草原再生協議会会長の高橋佳孝氏が「阿蘇草原と水、地域の関わりについて」、慶応義塾大学環境情報学部教授の一ノ瀬友博氏が「地域のレジリエンスを高める地域循環共生圏構築」と題してそれぞれ講演。高橋氏は阿蘇の草原について「暮らしや生業を支えており、我々は多くの恵みをサービスとして享受している。一方で草原維持の担い手不足や酪農のあり方の変化などから草原景観に変化をきたしています。新しいコモンズを形成して草原再生に取り組んでいく」と草原維持に向けた多様な活動を紹介。一ノ瀬氏は、地域循環共生圏の定義について解説しながら、環境省の「地域循環共生圏づくりプラットフォーム」事業に採択された研究活動について紹介。「自然と人間の仕組みが阿蘇の環境で組み合わさることが理想。災害に強い地域づくりにつながる研究を展開していきたい」と語りました。

続く第2部では第1分科会「みんなが知らない野草資源の価値とは~阿蘇草原の新たな可能性~」と第2分科会「阿蘇における地域循環共生圏とは~地域振興につながる環境研究~」を実施。第1分科会では農学部の岡本智伸学部長が事例紹介として「ちょうどいい資源としての野草利用~生態系サービスを持続的に教授するために」をテーマに、自らの研究テーマである牧草や地域特性を活用したテロワール牧畜、阿蘇の野草をゾウのえさに活用する取り組みなどを紹介しました。また、岡本学部長の進行で、阿蘇における植物育成など各分野の専門家が登壇し、それぞれの活動について語りました。

第2分科会は九州地方環境事務所統括自然保護企画官の小口陽介氏による取組紹介の後に、本学の荒木朋洋九州キャンパス長がコーディネーターを務めてパネルディスカッションを行い、パネリストとして九州教養教育センターの市川勉教授、福﨑稔教授らが登壇。「阿蘇における地域循環共生圏の目標」をテーマに、草原の水浸透と地下水脈や、地域振興と産業構築に向けた水前寺のりの養殖、集落の営みと人々の関係性など複数の視点における事例を共有し、今後の取り組みについて活発に意見を交換しました。最後の質疑応答では、研究活動と住民の暮らしの具体的なつながりや今後の活動の展望について活発な意見が交わされ、最後に荒木キャンパス長が、「熊本県の魅力を聞かれたときに“草原の景色”を挙げる人は県内外在住を問わず多く、これからも皆さんと考えていかなくてはならない重要なテーマです。こういった活動とともに熊本地震からの復興を進めていきたい」とまとめました。

当日の登壇者とテーマは下記の通りです。

基調講演Ⅰ「阿蘇草原と水、地域の関わりについて」 阿蘇草原再生協議会会長 高橋佳孝氏
基調講演Ⅱ「地域のレジリエンスを高める地域循環共生圏構築」 慶応義塾大学環境情報学部教授 一ノ瀬友博氏

第1分科会「みんなが知らない野草資源の価値とは~阿蘇草原の新たな可能性~」
○事例紹介とディスカッション
事例1 東海大学農学部 岡本智伸学部長「ちょうどいい資源としての野草利用~生態系サービスを持続的に享受するために~」
事例2 九州沖縄農業研究センター上級研究員 山下浩氏「阿蘇におけるオギとススキの種間雑種新品種育成の可能性」
事例3 日本緑化工学会 生態・環境緑化研究部会担当理事 中村華子氏「地域との協力・協働による阿蘇の草原植物の活用と地域活性化~日本緑化工学会 生態・環境緑化研究部会による“阿蘇小規模崩壊地復元プロジェクト”の取り組みからの事例紹介~」
事例4 公益財団法人阿蘇グリーンストック副理事長 山内康二氏「阿蘇の茅材事業」

第2分科会「阿蘇における地域循環共生圏とは~地域振興につながる環境研究~」
1 取組紹介
九州地方環境事務所統括自然保護企画官 小口陽介氏「次世代につながる地域のあり方について(地域循環共生圏の構築)」
2 パネルディスカッション
コーディネーター
荒木朋洋九州キャンパス長
パネリスト
市川勉教授(九州教養教育センター)「草原の水浸透と地下水脈‐研究知見を地域に還元するには」
 福﨑稔教授(九州教養教育センター主任)「地域循環共生圏構築の試み‐水前寺のりの養殖」
 上野眞也氏(熊本大学熊本創生推進機構教授)「南阿蘇村における集落の営みと人々の関係性」
 後藤至成氏(後藤コーヒーファーム代表)「農業と観光を結び付ける新しいスタイル」
 吉良清一村長(南阿蘇村)「野焼きと草原再生」

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