「障害者・障害児心理学」のテキストをつくりました

 こころの支援の国家資格である公認心理師を目指すためには、こころの支援に必要な心理学や関連領域の学問について包括的に学ぶ必要があります。心理・社会学科開講科目「障害者・障害児心理学」もそのひとつです。
 学科教員の中島由宇講師が編者をつとめた『これからの障害心理学――〈わたし〉と〈社会〉を問う』(中島由宇・沖潮満里子・広津侑実子(編)有斐閣)が3月に刊行されました。本学科では、2023年度から、「障害者・障害児心理学」のテキストとして活用していく予定です。
 学科・研究科の学生の方たちにさっそく本書を読んでいただき、この科目をこれから履修する人へのメッセージや本の感想をよせてもらいました。

「本書は実際にその障害を持っている方がどのように世界を知覚しているのかということについて触れることができ、障害は他人事ではないということを様々な形で学ぶことができます。そして、知識だけでは不十分であり、障害のある人の全てを知っているということではないということも本書では述べられています。その人らしい生き方や尊厳を尊重した支援をできているか、支援者は常に顧みることが重要であるということを、支援に関する授業で学びました。しかし、本書のインタビュー記事、特に『心理職を目指す読者の皆さんへ』という小見出しの部分を読んで、障害や支援に関する授業を履修したことで分かった気になっていたのではないか、相手と対等な立場で向き合う姿勢を意識できていたのかということを改めて振り返る機会になりました。    海老原」

「前半の『障害の理解と支援』は障害について理解を深める上でとても大切な内容が記載されていました。後半の『障害の心理的支援』では、障害の心理的支援の内容が章ごとに綺麗にまとめられており、講義で理解できなかったことや、もっと知りたい内容などがあった際に、とても重宝すると思われました。用語にはしっかりと説明が記載されており、用語がわからないから先に進めない、理解できないという心配はありません。また、読み手が受け身にならないように、途中で問題を挟み、理解を促している部分も多々あり、学習としての面も申し分ないと感じました。    サカイ」

「自閉スペクトラム症に関する記述から、本当の理解というのは『障害だから』と思考を止めてしまうのではなく、『何を伝えようとして、何を思っているのか』まで考えることなのではないかと改めて『理解』について考えさせられました。心理学をどれほど学んでいても完全なゴールはなく、常に考え学び続ける必要があると改めて実感しました。また、『障害』に対しもう一度考え直す機会となり、自身の学んでいた知識だけで満足してしまっていた部分があることに気付かされるなど、人を理解する難しさを感じました。説明の中で図やイラストが記載されているためよりわかりやすく、エクササイズで実際に『やってみよう』という項目もあったので、そこで自分はどのように感じ、考えたのかといった知識だけでは得られない学びもありました。    荒娘」
 
「自身の障害に対する理解、考え、思いを今1度見つめ直すことができました。自身は大学院に進学し、心理学を専門的に学んできましたが、それでも障害に対しての偏見というものは、自身の中に強く根付いているものであると、この本を読んで感じました。であるからこそ、自身を含め、『障害に対する偏見を持っている自分を自覚すること』が、今後心理職を目指していく人たちにとって非常に大切なことであるのではないかと感じました。事例なども豊富に記述されているので、リアルの声を感じながら、学習に励むことができるのではないかと思います。    堀口尚希」