「英語で学ぶ心理学・社会学」は2022年度から開講された心理・社会学科の科目で、今学期は1年生が履修しています。
この科目の目的は、(1)英語文献を読み、わかりやすい日本語に訳すこと、(2)英語文献を通して心理学と社会学の考え方や概念を学ぶことです。そのため、心理学や社会学に関連する出来事を扱ったもの、心理学・社会学の研究を紹介するもの、心理学・社会学の学術論文をテキストとしています。
例えば、心理学の研究成果を紹介する文章としては、The Economist誌(2015年5月30日)に掲載された「Do you see what I see? : Children exposed to several languages are better at seeing through others’ eyes」(私が見ているものをあなたも見ているだろうか?:複数の言語に触れている子供たちは他者の視点に立つことができる)という記事をテキストにしました。これは「心の理論」に関する心理学の実験結果を紹介したものです。「モノリンガル(単一言語)の子供たち」よりも、「バイリンガル(二言語話者)の子供たち」と「日常的に外国語に触れる機会がある子供たち」の方が「他者の視点に立って考える」ことができるということが明らかにされています。
そして、この研究のポイントは、バイリンガル(外国語を流暢に使う)でなくても、単に日常的に外国語に触れる機会があるだけでも「心の理論」に影響があるということを指摘した点だとされています。このテキストの読解によって、外国語学習の目的と成果は、その外国語を身につけることに加えて、「他者の視点」を想像する姿勢や態度を身につけることでもあるということを学びました。(興味がある方は、記事のタイトルで、インターネット検索をしてみてください。)
また、グループワークも行っています。5人程度でひとつのグループを作り、一人ひとつずつ英語の文章を調べてきて、グループとして日本語訳を行うテキストを選びます。第1回目は「英語で紹介・報道されている日本のモノ・コト・人」をテーマとしました。写真は、各自が調べてきたテキストの内容を紹介して、グループとしてのテキストを決めている様子です。
6月のテキストは、スタンレー・ミルグラムの論文「Behavioral study of obedience」をテキストとします。ミルグラムは「人はなぜ権威に従ってしまうのか」という問いに取り組んだ心理学者です。「ミルグラム実験」という言葉や『服従の心理』という本のタイトルは、一般的にもよく知られていると思います。
この授業を通して、英文の読解に「慣れる」(「英語は苦手だったけど、なんとか読めたし、訳すこともできた」という経験を積み重ねること)、そして心理学と社会学の考え方に触れることを目指していきたいと考えています。