海洋学専攻

研究科が育成しようとする人材

海洋学研究科は、海洋に関わる幅広い分野の知識と高度な専門知識・技術を修得することで、海洋関連分野で研究者や技術者として活躍する「有能な専門家」、または、海洋に関わる知識を社会問題の解決へとつなぐ国家公務員・地方自治体等の「高度実務家」として貢献できる人材の育成を図る。

近年の科学技術の発展は、さまざまな社会的な枠組みのグローバル化をもたらし、企業においても社会的責任が求められている。そのため、社会が直面する様々な問題を、豊富な知識と論理を武器として柔軟に解決できる人材が求められている。海洋学研究科の目指す「高度実務家」は、海洋に関する知識を社会問題の解決へとつなぐコーディネート能力を持つ人材である。

研究科の教育課程の特徴

近年深刻化している地球温暖化問題、各国沿岸海域の環境問題、気候変動に対する海洋の役割、海底地震、海底鉱物資源探査、水産資源変動問題など、海に関する様々な問題を明らかにする上で、海の自然現象を自然科学として理解することが重要である。同時に、将来にわたって人間の文明活動と地球の自然との共生を実現するためには、海洋とその資源を保全し、持続的に利用する方法と行動について考えなければならない。そのためには、海と人との関わりを調べ、国際的な協力・協調体制を築く人文社会学的方法と、海に関わる生物・理学的研究手法やエネルギー開発等の工学的技術の発展が不可欠である。海洋学研究科海洋学専攻は、これらすべての領域を総合的に学ぶことができる専攻である。専攻内には、次の3つの専門科目群と1つの総合科目群を置き、本専攻が目指す幅広い視野と高度な専門知識・技術をあわせ持つ人材の育成を行なう。

「海洋人間圏分野科目群」:海洋とその資源の保全および持続的利用の方法と実践に対する理解を目指した教育を行う。
「海洋生命圏分野科目群」:海洋に係る生物と水産に関するフィールド・実験・理論に根ざした教育を実践する。
「海洋地球圏分野科目群」:海洋の物理的・化学的な自然現象を理学的に理解し、フィールドと理論に根ざした教育を実践する。
 「総合海洋学科目群」:上記3分野を有機的に結合させ、実社会への応用を試みる教育を行う。この分野横断的な科目群は、本研究科の教育課程編成上の大きな特色である。

本研究科は、修士課程の修了要件となる32単位のうち、各分野を横断的に結びつける「総合海洋学科目群」の中から10単位以上修得させることで、専門分野に関する高度な専門的知識・能力の修得に加え、専門分野を広く俯瞰する能力の涵養を図る。

講義科目の編成

  1. (1)総合海洋学科目群

    本科目群の中に必修科目として『総合海洋学特論』を置く。この科目は、ひとつの課題に対して、海洋物理学・海洋化学、地球科学、海底鉱物資源学、水産学、海洋生物学、食品化学、海洋人類学、海洋政策・法学等、異なる分野を専門とする複数の教員が、それぞれの視点から解説を行い、複数分野による知識の体系化を達成することで、問題解決の考え方を学ばせることを目的としている。「海洋学」が広範な分野を包括することを、履修者自らが考え、議論する。

    そのほか、海洋人間圏分野、海洋生命圏分野、海洋地球圏分野、をそれぞれ専門とする学生が、自らの修士論文研究テーマを俯瞰できるよう、各分野の中心をなすと思われる基礎的な問題を議論できる科目を配置している。これらは修士論文研究テーマとは直接関連しない他分野の科目を理解するための基盤であって、分野を有機的に結びつける「体系的なコースワーク」となる。また国際会議での発表や情報交換の能力を涵養するために『アカデミックイングリッシュ』を配置、さらに高度専門職業人となるためのさまざまな解析スキルを身に付けるために、『海洋学特論A、B、C、D』の4科目を設定している。

  2. (2)海洋人間圏分野科目群

    海洋人間圏分野では、海洋・沿岸域における多様な人間活動を調整し、総合的な視点からの管理を担うための理論と方法を学ぶことを目的に『海洋人類学特論』『環境・開発経済特論』『海洋ガバナンス特論』『沿岸域管理特論』を設定している。また、海洋資源の利用について、多様な関係者の合意形成を図りつつ、持続可能な利用・管理を行うための理論的知識・方法論として、『海洋資源管理特論』『ロジスティクス特論』『水産社会特論』を設定している。

  3. (3)海洋生命圏分野科目群

    海洋生命圏分野では、海洋の生態系を構築する様々な生命現象を理解するために、細胞、分子レベルでの生態学と物質変化を学ぶ『分子細胞生物学特論』『海洋生物化学特論』の2科目、水圏生物の生態・分類を学ぶ『水族生理学特論』『浮遊生物学特論』『底生生物学特論』『海棲哺乳類学特論』『魚類学特論』の5科目を設定している。さらに水産学から食品科学にいたる基礎から応用までを学ぶ『資源生物学特論』『水産増殖学特論』『水産食品科学特論』の3科目も設定し、体系的なコースワークの実現を可能にしている。

  4. (4)海洋地球圏分野科目群

    海洋地球圏分野では、海洋を取り巻く環境下で起こる自然現象を理解するために、理学をベースとした理論とフィールドワークの方法論として、『大気・海洋物理学特論』『地球化学特論』『低次生産環境特論』『固体地球物理学特論』の4科目を設定している。また、鉱物資源開発や自然エネルギーの利活用に関する地球工学として『海底資源開発工学特論』『海洋エネルギー工学特論』の2科目、人間活動と沿岸環境の保全等を議論する『沿岸域工学特論』を設定している。

  5. (5)研究ゼミナール科目

    学生の研究指導は、入学時の学生の申告のもとに、適任教員(指導教員)を決定し、この教員が主に担当する。さらに、少なくとも1名(最大3名まで)の副研究指導教員を配置し、複数教員による研究指導により、高い学位水準を確保し、狭い学問分野に偏らないで全体を俯瞰する能力の涵養を図る。学生は、この研究指導教員による『海洋学研究ゼミナール1、2、3、4』を、入学時より課程修了まで一貫して履修することで、修士論文の完成を目指す。