「パタゴニアの考える企業の責任とは~モノと人、環境との関係~」を開催しました

教養学部人間環境学科自然環境課程では、6月14日に湘南キャンパスで「パタゴニアの考える企業の責任とは~モノと人、環境との関係~」を開催しました。大学院人間環境学研究科と共催でFD(=Faculty Development/授業改善)研修企画として3回連続で実施しているこのセミナーは、各分野で活躍している方々の話を聞くことで教員の授業の質の向上を図るとともに、学生の視野を広げることを目的としています。3回目となる今回は、パタゴニア日本支社長の辻井隆行氏を講師に招き、学生や教職員、地域住民ら約140名が参加しました。

辻井氏は、「パタゴニアは何を販売している?」「1988年にボストンにお店を出したときに発生した重大な問題とは?」など選択式のクイズで仕事内容を紹介。「パタゴニアはアウトドア衣料品とサーフィン用品、最近では食品も販売しています。88年に発生した問題とは、ボストンストアの社員が地下に保管してあったTシャツから放出されていたホルムアルデヒトの影響で健康被害を訴えたことです。それがきっかけとなり、原料のコットンには栽培の過程で大量の殺虫剤や農薬、枯葉剤が使われているという事実を知って、1996年以降、すべてのコットンをオーガニックに切り替えました。「オーガニックコットンは必ずしも着ている人にとって良いわけではなく、畑でコットンを育てる農家にも、土地にも優しい」と説明しました。その後、多くの場合、石油で作られているウエットスーツを、環境に配慮して天然のラバーで製作したことや、フェアトレードについても紹介し、「最近は安くて簡単に手に入るファストファッションが増えていますが、安く売るということは、どこかで誰かが犠牲になっているということです。世界中の人が安全に働き、食べていける仕組みを確立しなければいけません」と話しました。

大学を卒業後、企業チームでサッカーを続けていたという辻井氏は、現役を引退してから大学院に通い、世界各国を訪れるうちにパタゴニアに出会ったと振り返り、「アウトドアスポーツに真剣に取り組む社風やスタッフの姿勢にひかれ、アルバイトから始めました。社員になってからも長期休暇をとって、海外に足を運んでいます。仕事を選ぶときに、その企業の商品が今どれくらい売れているか、給料の良し悪しももちろん大事なことかも知れませんが、それ以上に、自分が本当にやりたいことかどうなのかを考えてほしい。大学時代の時間がある今こそ、心の声を聞く時間をつくってください」とエールを送りました。

参加した学生からは、「ただ製品をつくって販売するだけでなく、環境問題や世界で働く工場の人々のことなど、多方面に目を向けて企業活動しているのが素晴らしいと思った」「製品の裏側を考えることでいろいろなことが見えてくることがわかった」「自分が将来どういう仕事に就いてどのようなことがやりたいか、初めて少し明確にすることができた」といった感想があり、大きな反響がありました。

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