海洋学部環境社会学科の李銀姫准教授らが参画する国際研究チーム「グローバルパートナーシップV2V(Vulnerability to Viability)」が、2020年からカナダ政府助成機関の採択を受けて小規模漁業に関する研究を展開しています。同チームは、カナダを拠点にした22カ国の研究者からなる組織で、15の政府機関や31大学、21のNGO・団体から構成されています。国際プロジェクト「脆弱性から可能性へ:アジアとアフリカにおける強い小規模漁村コミュニティーの構築に関するグローバルパートナーシップ」を推進しており、アジア(日本、タイ、バングラデシュ、マレーシア、インド、インドネシア)とアフリカ(ガーナ、マラウイ、ナイジェリア、セネガル、南アフリカ、タンザニア)をフィールドに、各国の研究者が小規模漁業や漁村共同体の総合的な力を高めるための学術研究・教育活動を行っています。
李准教授が代表を務める日本研究チームは、20年に設立されたもう一つの小規模漁業関連グローバル・パートナーシッププロジェクト「TBTI(Too Big To Ignore:無視するには大きすぎる)Japan」」と積極的に連携しながら、さまざまな研究活動を進めています。昨年6月には、世界海洋週間に合わせた国際的なイベントでオンラインセッション「The Voices of GENBA」を開きました。その際に、李准教授は日本小規模漁業の現状について、「世界的には“漁業先進国”とも言われていますが、小規模漁業に関しては国際的認知度が低いうえ、魚価の低迷や資源の悪化、漁家の所得や地域活力の低下、後継者不足など持続性に関する課題が山積しています」と指摘。これらの課題を解決するべく、21年10月からは、漁業におけるジェンダー問題解決につなげる活動として、女性市民が漁業の魅力や課題、ジェンダー問題などを学ぶ体験型教育プログラム「漁する女子ジャパン」プログラムを展開しています。
李准教授は、「V2Vの特徴は、ただ研究成果をまとめるだけでなく、知見を社会へと積極的に発信しながら、小規模漁業・漁村の持続性を高め、食料供給機能の維持や環境保全へとつなげる点にあります。チームがターゲットとする国それぞれで課題は異なりますが、連携することで見えてくる解決策もあります。今後も国内外の活動に目を向けながら、力強い小規模漁村コミュニティーの構築を目指していきたい」と抱負を話しています。