医学部の今井講師、後藤講師と工学部の葛巻教授が「MARC×湘南アイパーク シーズ発表会」で研究シーズを紹介しました

医学部医学科の今井仁講師(総合診療学系健康管理学領域/総合医学研究所所員)、後藤信一講師(総合診療学系総合内科学領域/同研究員)と工学部機械工学科の葛巻徹教授(マイクロ・ナノ研究開発センター)が、9月7日に神奈川県藤沢市の湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)で開催された「MARC×湘南アイパーク シーズ発表会」で研究シーズを紹介しました。この催しは、2017年に慶應義塾大学を中心に首都圏の私立大学等とともに設立され、昨年4月に一般社団法人化した首都圏ARコンソーシアム(MARC)と、日本最大級のライフサイエンス研究施設である湘南アイパークの連携により初めて開かれた、アカデミアと企業のマッチングイベントです。MARC加盟機関の研究者が18件の研究シーズを口頭とポスターで紹介し、オンラインでも公開されました。

今井講師は、「クローン病における病原性共生菌に対するモノクローナルIgA抗体の臨床応用」をテーマに発表。炎症性腸疾患の一つである難病「クローン病」の原因となる病原性共生菌「AIEC」(接着性侵入性大腸菌)に特異的に反応する抗体「IgA」に関する研究成果を紹介し、「モノクローナルIgA抗体の活用により正確な病原性共生菌の保菌者の診断が可能になります。抗体が持つ腸管上皮細胞への細菌の接着を阻害するという特徴を活かして治療への応用も検討していきたい」と語りました。

葛巻教授は、「脂肪由来幹細胞積層体からの腱様組織形成技術の開発」と題して発表。ヒト脂肪由来幹細胞の積層構造体(三次元構造体)に両側から牽引する力を加えると、特異的な部分で腱やじん帯と同様の細胞組織へと分化が進むとともに、その細胞から産生されたコラーゲン線維だけが牽引した方向に配列するという成果について説明し、「このメカニズムを応用して独自の牽引培養技術を開発し、ヒトの腱やじん帯に移植可能な組織の形成を目指します」と述べました。

前職である慶應大の研究者として登壇した後藤講師は、同大学在籍中に留学先のアメリカ・ハーバード大学で取り組んだ研究成果として、「12誘導心電図を用いた心房中隔欠損検出技術の開発―AIによる自動診断を用いて―」をテーマに発表。日本とアメリカの3つの医療機関で測定した心電図と心エコー検査の結果をAIに深層学習させて開発した心房中隔欠損症の診断モデルを紹介し、「たった1枚の心電図から高い精度で疾患が感知できるため、早期診断・治療が可能になると考えられます」と有用性をアピールしました。

ポスター発表では、今後の研究の方向性や臨床応用の可能性について参加者と意見交換。メディカルサイエンスカレッジ伊勢原研究推進部の穂積勝人部長(基礎医学系生体防御学領域)は、「研究成果を臨床につなげるためには企業との連携が不可欠であり、今回はそのための貴重な機会をいただきました。今後も早期の社会実装を目指し、積極的に研究シーズを発信していきたい」と話していました。