教育研究上の目的・人材像

食品科学専攻の教育方針と教育目標

地球世界の漁業と養殖業は、2007年には約1.56億トンあまりの魚介類を食用として、世界に供給しました。世界の総人口は69億人ですので、一人当たりに約23kgを供給したことになります。このうち、41.7%が養殖業、58.3%が漁獲によって生産されています。養殖業の生産は年々、伸び続けています。一方、漁業資源は、すでに約半分が現状以上の生産拡大の余地はなく、さらに、約30%が過剰開発か枯渇、あるいは枯渇からの回復途上といった非常に厳しい状況にあります。総人口は今後も増え続け、2050年には94億人に達すると推定されています。食糧資源としての水産物の重要性は年々高まっていきます。したがって、今後より先進的な養殖業を推進すると共に、漁業資源を合理的に管理することはもとより、食料として持続的に利用してゆくことが必要です。

産業革命以降、私たちの活動は、環境に様々な悪影響を与えています。その最たるものが地球温暖化です。地球温暖化にともなう海水温の上昇が水生生物やその生態系に与える影響は深刻です。生物多様性の減少、回遊経路の変化、再生産の場である産卵場の移動や消失、温帯域では漁場の高緯度海域への移行などが予想されています。しかし、これら諸問題に対し、私たちの水生生物の理解は十分でしょうか? 残念ながら、私たちの知識や理解は、海洋・陸水を問わず、ごく限られています。人為的に環境が激変していくなか、今後、水生生物をさらに深く知り、水生生物と海洋あるいは陸水環境との関連、生態系の理解を一層深めることが必要です。そうでなければ、環境と調和した養殖業の推進や漁業資源の合理的な管理、持続的な利用は困難なものになるでしょう。

さらに、私たち人間が健康な身体を保つためには健全な食材が必要です。そのために必要な食料(栄養)をどのように確保するか?あるいは、どのような環境で養殖すると、どのような魚介類に成長するかを知ることも重要です。また、食糧自給率を高めなければ、輸入に頼らざるをえない状況がますます進行します。そのような場合に、「食の安全・安心」をどのように保障するかも重要な課題になります。また、水産物に限らず、手に入る食材をより付加価値の高い食品に加工する技術も、豊かな生活には欠かせないものです。

このような状況を打開することができる人材を輩出することを目的として、水産学科食品科学専攻では、まず有機化学、無機化学、生物化学、人と食物の構造と機能といった基礎的科目から学びます。そのうえで、「食品製造技術」、
「食品の衛生管理」、「食品分析」、「食育」に関する知識と技術を修得し、「食品分野に貢献できる人材」を、国内外に送り出すことを目指します。

水産学科食品科学専攻のカリキュラムは、水産や食品に関して多岐にわたる豊富な講義科目と実験科目によって特徴づけられます。1年次生の導入科目としては、「水産学入門ゼミナール」や「水産フィールド演習」などがあります。
「水産学入門ゼミナール」では、少人数のグループに分かれて、食品科学専攻に加え生物生産学専攻も含めた水産学科の全教員から各分野のトピックスを知ることができます。「水産フィールド演習」では、野外での調査や室内での実験を行います。これらの導入科目によって、2年次以降の学習の方向性を考えてもらいます。1年次の2セメスターから、食品化学、基礎微生物学などの食品基礎科目を学びながら、海洋生態学、水産増殖学、資源生物学などを学習し、水生生物の増殖の仕組や環境との関連を、また、水産餌料・栄養学、食品栄養学、食品製造学などを通して、水生生物を資源として持続的に利用するための知識を修得します。実験・実習は6科目が開講されます。講義で学んだことを自分自身の目で観察し、より深く理解できるカリキュラム構成になっています。就職活動が始まる3年次の6セメスターでは、「水産学特別講義」があります。これは、様々な分野で活躍している水産学科の卒業生などに講演してもらい、社会人としての将来を考える一助とします。最終年度には、総仕上げとして、卒業研究があります。研究の考え方や解析方法、科学論文の書き方、プレゼンテーションの方法などを教員から個別に指導を受けます。本科目の目的は単に知識や技術の修得だけではありません。教員の指導のもと、様々な活動を行いながら、社会性を身につけてもらいます。

水産学科食品科学専攻が養成しようとする人材

生物資源を食品ととらえ、「食品製造技術の修得」、「食品衛生に関する資格要件の取得」、「食育の分野に貢献する人材の育成」の3つの柱を主眼としたカリキュラムで構築しています。従って、食品となりうる生物の特性と食品科学を理解したうえで、食品の製造、食の安全・安心に関する知識と技術を身に付け幅広い視野を持つ、食品分野に貢献できる人材の育成を目標としています。具体的な就職先としては、国や県の水産研究所、水産食品関連会社のほか、環境コンサルタント、水族館や博物館などが、考えられます。

指定された科目の単位を修得すれば、「学芸員」、「HACCP実務管理者※」、「中学・高校教諭一種理科免許」の資格取得が可能です。また、本学独自の資格である「海洋環境士」の資格も取得できます。

平成9年厚生省通知(総合衛生管理製造過程の承認制度に係る「HACCPシステムについて相当程度の知識を持つと認められる者」の要件等について)による。

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