教育研究上の目的・人材像

教育方針と教育目標

わが国は原材料およびエネルギーのほとんどを海外からの輸入に頼っており、今後とも発展を続けて行くためには、これらの貴重な原材料やエネルギーを使ってより付加価値の高い[製品]を生み出し、技術立国として世界に貢献してゆく以外に方法がないことは周知の通りである。ここで言う[製品]とは最終製品ばかりではなく、鉄鋼材料等の中間製品、コンピュータ関連のきわめて小型の部品から自動車、航空宇宙機器、エネルギー関連機器のような比較的大型の機械、またこれらを作り出す工作機械、生産ライン、プラント、更にはこれらのハードウエアを支えるソフトウエアを含むあらゆる種類の[製品]を意味する。機械工学科は、21世紀の社会に必要なこれらのきわめて幅広い、いろいろな種類の[製品]、[技術]を生み出すための人材、すなわちこれからの「ものづくり」を支えてゆく人間的にも優れた幅の広い技術者、研究者を育成することを教育方針としている。

機械技術者ならびに研究者としてこのような責務を担うためには、単に関連する専門知識を修得するだけではなく、地球規模の幸福・福祉に関する正しい認識と高い倫理観をもち、機械技術者が生み出す[技術]、「製品」等の社会に及ぼす影響の重大さを認識した上で、それらの知識を具体的に社会に役立つ技術として応用し、問題解決のできる総合的な能力を身に付けることが重要である。このような観点から、機械工学科では個々の学生が以下に示す具体的能力を身につけられるように学習・教育目標を設定している。

  1. 1.高度に複雑化した現代文明の抱える諸問題を歴史・地理・環境を含む様々な角度から総合的に理解する中で、人間の現在のあり方を見直し、自ら倫理的な選択を考える力の育成
  2. 2.部分的な考えに偏ることなく総合的にものを見ることができ、技術者として社会に対する責任を自覚できる能力(技術者倫理)
  3. 3.国際舞台で活躍するための英語の基礎能力
  4. 4.数学、物理学に関する基礎知識とこれらを工学に応用できる能力
  5. 5.機械系主要分野(機械力学、材料力学、熱工学、流体力学、計測制御)の基礎知識を理解し、工学的問題解決に応用できる能力
  6. 6.コンピュータ、情報処理に関する基礎知識とそれを応用できる能力
  7. 7.設計・製図の基礎知識と、機械要素やシステム設計に必要な重要検討項目、手順の理解
  8. 8.機械工学の主要分野に関連した実験・計測手法の基礎知識
  9. 9.工学的な問題解決をはかるべく自ら計画・遂行・解析し、結果を工学的に考察し、その結果を論理的に記述すると共に他人の前で発表、討論できる能力
  10. 10.変化に対応して継続的、自立的に学習する習慣と能力

この学習・教育目標を達成するために機械工学科では次のような考えでカリキュラムが編成されている。先ず、1の学習・教育目標を達成するために、現代文明論および文理共通科目が必須科目として用意されている。これらは本学の建学の精神に則り設けられている科目でもあり、専門技術者である前に、幅広い知識、立場にたって正しい決断、判断ができるために必要な素養と能力を身につけることが期待されている。さらに“入門ゼミナール2”において機械工学と社会の関りについて様々な事例を取り上げて学び、ディスカッションを通じて考える力を養う。また、これからの技術者、研究者はますます国際社会での活躍が期待されており、特に英語の基礎知識は必須であることから、3の学習・教育目標に関連して英語コミュニケーション科目を必須科目として開講している。さらに学科の専門科目として“総合英語力基礎講座”および“科学英語”を設け、英語力の更なるブラッシュアップを図っている。また、社会に出てからは自らが直接かかわる技術が社会にどのように影響を及ぼすかについての正しい自覚が重要であり、2の学習・教育目標に関連して工学部共通の科目として“科学と倫理” を開講しているほか、“機械工学ゼミナール”において技術者倫理に関わる諸問題をとりあげ、ディスカッションを通じて必要な能力が身につくように配慮されている。

専門科目に関しては、将来の「ものづくり」のさらなる高度化・多様化に取り組むことのできる技術者・研究者を育成するためには、以前にも増して基礎学力の充実が重要である。したがって、本学科の教育の重点をまず数学、物理学の専門基礎と“機械基礎力学”、“材料力学”、“熱工学”、“流れ学”の4基礎力学および“制御工学”、“機械材料”、“機械加工”の3基礎専門科目に置くこととした。また、これらの科目のうち、“機械材料” と“機械加工” を除く5科目にそれぞれ“1”と“2”を設け、段階を踏んで学習できるようにしている。数学については、機械工学の専門科目の理解と応用に必要な“工科の微積分1・2”、“工科の線形代数1・2”、“工科の微分方程式1・2”、“応用数学1・2” および“工科の確率統計” を設け、数学と工学との関連付けを重視して修得できるようになっている。また“物理学A” および“物理学B” においては、力学に重点を置き、あわせて“電磁気学基礎” や“物理実験”も履修することができるようになっている。これらの履修によって、数学、物理学の基礎専門科目と機械工学の主要専門科目とを有機的に結びつけて理解できるように配慮されている。以上の重点科目については、講義と演習を組み合わせ、基礎的レベルから応用まで徹底的に能力の向上が図られる。なお、数学および物理学のより基礎的な部分から学習したい学生に対しては、“基礎数学A・B”、“基礎物理A・B” を設定している。

本学科では、以上の重点科目と同様に実験実習科目、すなわち“入門ゼミナール1”、“機械工学実験1”、“機械工学実験2”も重視している。これらによって、機械工学に関連が深い基礎的現象を体得し、結果を解析し理解すると共に、工作機械等の実習によって「ものづくり」の体験ができるように配慮されている。また、今後の「ものづくり」には、コンピュータの利用がますます欠かせなくなることから、“基礎情報処理”、“プログラミングF・C”などの情報処理に関する実習科目を設けている。また、「ものづくり」と表裏一体をなす設計・製図関連科目として、“基礎製図”、“機械要素設計”、“機械デザイン1・2” を設け、ものの具体的なイメージを図形的に表現するための製図法や規則に関する基礎知識を修得し、さらに“機械要素設計”、“機械デザイン1・2” の中では機械要素および機械システムを総合的にデザインする能力を養う。このデザイン能力は、多くの制約をともなう設計条件のもとで最適な解を捜ることのできる能力であって、単に機械を設計するときだけに活かされるものではなく、種々の科学・技術・情報を利用して目的を達成するための広義の「デザイン能力」の育成にもつながるものと考えている。さらに、情報処理と設計・製図双方に関連する“CAD/CAM” を配し、コンピュータ支援の設計に関する基礎知識が得られるようにもなっている。

専門科目としては、上記の重点科目に加え、“構造力学”、“機械の信頼性”、“振動学”、“トライボロジー”、“エネルギー変換工学”、“環境とエネルギー”、“流体力学”、“流体機械”、“ロボット工学1・2”、“機械力学”、“ファクトリーオートメーション”、“電気工学”、“電子工学”、“基礎数値解析”、“CAE”、“インダストリアルデザイン”などの科目を設け、それぞれの選択した専門分野に応じてさらに幅広い知識が得られるようになっている。また、“先端加工”、“先端材料”、“マイクロマシン工学”、“マンマシンシステム”、“先端技術と機械システム” など、現代技術に関する最新情報や将来展望についても学修できるようになっている。これらの科目の多くは、本学科の特色が十分反映されるように精選されたものであり、学生はそれぞれの興味と能力に応じて科目履修ができるように配慮されている。

また、コミュニケーション能力はこれからの国際社会ではますます重要になるとの認識から、学生と教員、学生同士の双方向のディスカッションを前提としたゼミナール形式の科目を学年ごとに設けている。これは少人数クラスで実施するものであり、教員と学生との信頼関係を築く上でも重要な科目である。本学科では、“入門ゼミナール1・2”、“機械工学ゼミナール”、“問題発見ゼミナール”をゼミナール科目として設置している。これらのゼミナール科目では、機械工学に関わる様々な諸問題を調査、発表さらにディスカッションを行う一連の流れの中で、1つの問題においても様々な見方・考え方があることを学び、自立した技術者として必要な判断力と責任感を身につけることを目標としている。

卒業研究は本学科の最重要科目であり、この科目の履修にあたっては、修得単位数に関して先修条件を設けてある。学生は、1教員あたり10名前後づつ各研究室に分かれ、自ら課題、テーマを設定し、計画を立てそれを実行することにより研究を遂行する。それにより高度な問題発見解決能力、すなわち与えられた制約の下で社会的・経済的・倫理的・安全面上等の様々な点からの考察を加えながら計画的に仕事を進め、結果を論文として纏める能力、またその結果を発表、論議する能力などを育成する。また設定した研究課題と現代社会との関わりについて考察することも必要である。

本学科では全体的には以上のような教育方針の下に学生の教育にあたってきている。しかしながら機械工学科を卒業する全ての学生が同じ進路を進むわけではなく、機械工学の知識をベースとしながらも、さらに広い分野で職業を選択する学生も増えている。また逆に専門知識を高度に利用していく立場からは、社会のニーズの多様化、能力のグローバル化の傾向に十分対応していくことが求められている。機械工学科では学生自らの興味や将来の進路に応じて選択可能な2つの履修コースを設け、第5セメスターの開始時に選択し履修できるように配慮されている。

機械工学科が養成しようとする人材

機械工学科は、すでに述べたように21世紀の社会に必要なきわめて幅広い、いろいろな種類の「製品」と「技術」を生み出すための人材、すなわちこれからの「ものづくり」を支えてゆく、創造力と応用力を持ち、社会の利益と発展に貢献することのできる、人間的にも優れた幅の広い技術者、研究者を養成しようとしている。この理念を基に、「ものづくりに必要な基礎的能力」、「ものづくりに必要な実行力」、「ものづくりに必要な情報収集・発信力」を身に付けた人材を育成することを目標としている。

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