工学部

学生座談会

1期を1陣としてノースダコタ大学での15カ月間の飛行訓練を修了し帰国した学生たちが、留学中の体験を語り合いました。

※座談会は2009年度実施

―おかえりなさい。15カ月間にわたる留学生活はいかがでしたか?

菊池

最終的に、日米の事業用操縦士ライセンスの取得という大きな目標があったので、座学も飛行訓練も、とにかく毎時間、集中して臨みました。

木村

初めての離着陸から、自家用操縦、事業用操縦、計器飛行と、ステップアップするごとに難しさがありました。何度も自信をなくしかけては、その度に努力して壁を乗り越えてきたことで、精神的にも強くなれたと思います。

3人の男性が並んで座っている
左から 菊池 賢樹さん 小川 康太さん 木村 翼さん

小川

その中で、仲間の存在は大きかったですね。自主的に毎日全員でミーティングを開くようになり、訓練の反省や吸収した知識を共有しました。最後までやり遂げることができたのは、「仲間も頑張っているから自分も頑張ろう」と思い続けてきたからですね。

―飛行訓練について詳しく教えてください

小川 康太
小川さん「1期生は留学を通して、強い横のつながりができました。あとは、僕たちが留学で得たものを次の後輩たちに伝えていきたいです。」

菊池

ファーストソロ(初単独飛行)の日は、朝、目が覚めた時から緊張していました。最初、いつものように教官と乗ってOKがでたので一人残されたのですが、横を見ると教官の座席がぽっかり空いていて心細かったのを覚えています。でも、いざテイクオフしてみると、あぁ、今、自分だけで飛んでいるんだという充実感がこみ上げて、あとは、ただもう楽しくて。着陸して、管制官に「Congratulations!(おめでとう!)」と声をかけられたとき、なんとも言えず誇らしい気持ちで胸がいっぱいになりました。

小川

ファーストソロやソロクロスカントリーを経て、自家用操縦士のライセンスを取得するまでは、緊張感はあるものの、景色を独り占めして大空を飛ぶ爽快感を満喫できました。それが、事業用・計器飛行訓練になると、フードをかぶり、まわりの景色を見ずに計器だけを使い、管制官と英語で交信しながら飛行しなければなりません。勘の働きがまったく通用しないという厳しさにぶつかりました。それまで気づかなかった自分の甘さを自覚したのがその時です。それ以後は、予習に多くの時間を費やし訓練に臨むようになりました。

木村

やっぱり、ステップアップするごとに、壁も厚くなっていきましたね。最後の難関は、アメリカの操縦士ライセンス(FAA事業用ライセンス)を取得した後、日本の操縦士ライセンス(JCAB事業用ライセンス)を取得する時でした。国が違えば要求されることも異なり、特に、学科試験には新たな勉強が必要で、精神的にもきつかったです。あれほど自分の意志を試されたことはなかったですね。

―留学中、英語で苦労したことはありましたか?

木村

最初は、授業中に聞き取れないことも多かったので、授業が終わるといつも、わからなかったところを仲間同士で聞き合って復習していました。

小川

東海大学での1年次の座学に、いかに真面目に取り組んだかで、留学中の授業の理解度が違ってくると実感しました。英語の授業が役に立ったことはもちろん、専門科目では、日本で学んだことが基礎になりました。英語が不慣れでも、内容に馴染みがあれば、そこから理解することができますから。

木村

国際線のパイロットにとって英語は必須。英語が母国語の文化圏に飛び込んで、あたりまえに英語を使い、英語力を磨くことは、将来、大きなアドバンテージになると思います。

―ノースダコタ大学(UND)航空宇宙学部は全米屈指と聞いていますが?

菊池

実は、僕は日本の高校を卒業してすぐUNDに入学しました。当時はまだ東海大学に航空操縦学専攻がなかったので、母の故郷である米国の大学という選択肢の中で、特に施設環境が整ったUNDを志望したのです。その後、日本の航空会社に就職するなら、やはり日本の大学が有利だと判断し、第1期生として編入しました。ですから、UNDの飛行訓練施設の充実度や教育のレベルの高さには太鼓判を押します。

菊池 賢樹
菊池さん「パイロットは多くの人の支えがあって、はじめて飛行機を運航できます。仲間と助け合った留学生活は、協力の大切さを教えてくれました。」

小川

設備が新しいので、実際のエアラインとのギャップが少ないということもメリットですね。

木村

アメリカ人の教官は、とてもフレンドリーで大いに褒めながら教えてくれます。おかげでリラックスして訓練に臨めました。でも、自分を過信して気を抜いてはだめ。自分で自分を律する自覚が芽生えたことも良かったです。

―これから、卒業までの抱負を聞かせてください

木村 翼
木村さん「留学中、東海大学の先生から、よくメールや電話をいただきました。小さなことも相談できたし、たいへん勇気づけられました。」

小川

まず、UNDで身に付けた技術を維持できるよう、シミュレーターなどを使って自主訓練を続けていきたいと思っています。また、パイロットとして人間的な幅の広さや判断力を養うために、もっと教養を深めていきたいです。

木村

その点、東海大学は総合大学として多様な科目の選択肢があるので、今後は、専門以外の科目も、時間の許す限り積極的に履修していきたいと思っています。

菊池

パイロットは、どんな場面でも任務を遂行する強い責任感が求められます。東海大学の仲間たちと共に切磋琢磨しながら、人格も磨いていけたらと思っています。常に、自分を今よりも向上させていく、そんな姿勢を大切にしていきたいです。